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青蓮学園物語
15
 腑に落ちなくて僕が首を傾げていると、智兄が納得顔で口を開いた。


「あぁ……オカ研に正式勧誘しようとしたって事ですか?
 たしか春樹は仮入部状態でしたよね?」

『ええぇ?!何それ、そんなの初めて聞いたから…っ』


 確かに優に誘われて顔を出した事はあるし、暇つぶしに自分の意思で付いていった事もあるけど…っ。

 みんな部外者の僕にも優しくて、いつでも遊びに来て良いよ?とは言われてたんだけど。

 まさか仮入部状態だったとは……。


「この学園は部活必須だから、便宜上一時的にオカ研に所属させてるだけだ。
 その……同好会だったら兼部もOKだから、急に他所に入りたくなっても全く支障はないだろ?」


 それは僕も聞いた事がある。

 同好会なのにいつも人数が多くて、何でクラブに昇格できないんだろう?と常々思ってたんだよね?


 不思議に思って優に理由を確認したら。

 どうやらオカ研には蓮見先生経由で、隣のお寺が檀家さんから頂いたお菓子の差し入れがあるらしくて。

 僕もそれが目当てで遊びに行ってたんだけど……同じ志を持った兼部の奴が多いらしい。


 逆に言えば、部活に昇格してしまうと、兼部の奴らが軒並み去る事になるから……。

 一気にメンバーが減ってしまうわけで。

 少人数だと夏の肝試しや、ミステリースポット探索時に活気がなくなると、蓮見先生が反対しているらしい。


「それで、いい加減ちゃんと勧誘しろって金子に言われたのか?」


 すっかり呆れ顔が定着した如月さんに問われて、蓮見先生は口篭もる。


「いや……そうじゃない。
 勝手に正式入部の手続きしたのがバレて、その……あれだ。
 今日中に相川に謝って取り消すか、きちんと了承を得ろと」

「「『………』」」

「お前らなら言わなくてもわかると思うが、正式部員は多ければ多い方が良いに決まってるだろ?
 ちょうど生徒会も任期交代の時期でこれから予算案の審議も始まるし、それで……つい出来心で」


 理事長の息子だからって、やりたい放題にも程があるだろーーーー!?

 出来心……犯罪者が取調べで答える動機ベスト5に入るであろうその台詞を、堂々と告げる蓮見先生に僕達3人は絶句した。


 付き合いの長い如月さんも、それ以上言葉が続かなかったみたいで。

 空白の時間が1、2分ほど続いた後、智兄が大きな溜め息と共に言葉を発した。


「はぁ…っ、それって公立の学校だったら、公文書偽造罪ですよね?」

「うちは私立だから、何の問題もないだろ!?」


 そう言って開き直る蓮見先生の態度は、僕にとっては他人事じゃないんだけど…っ。

 その場しのぎばかりしてると、碌な大人になれないサンプルを見ている様で。

 僕は今までの生活を大いに反省した──。




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