青蓮学園物語
5
「はぁ…っ、俺が人真似なんてする人間に見えますか?
そうじゃなくて──」
翔太の台詞に、眞鍋は大仰な仕草でその台詞が間違っている事をアピールし、一旦そこで言葉を切る。
そのポーズはとても様になっているのだが。
なんだか皆が言う様に、本当に鏡の前で練習してそうだよねぇ……?
そして明らかにその態度は相手の気に障ると思うんだけどなぁ?
どうやら相手を怒らせて本音を語らせる手法で、コミュニケーションをとっている様で。
不器用と言おうかなんと言おうか……見た目の造作が整ってる所為で、余計に冷たい印象を与えるんだろう。
多分一対一だったら、悪い印象しか僕に与えなかったはずの眞鍋が。
翔太に良い様にからかわれてるのを目の当たりにした所為で、やっぱり噂って当てにならないと僕に改めて実感させていた。
イヤミったらしいナルシストだと、最初に話聞いた時は思ったんだよねぇ?
確かに自分の物差しでしか測れないタイプみたいだけど、弁が立つ奴に言い負かされたら素直に負けは認めるタイプで。
きっとそうやって視野を広げて来たのだろう。
僕に関する事も、翔太にしか聞けないと最初に言っていたのは。
きっと翔太が相手なら、眞鍋も納得のいく結果を得る事ができると思ったんだろうなぁ?
なんとなく情が移った状態の僕は、眞鍋の暴言も笑って済ます事が出来た。
「せやったら、純粋にハル好きになりたいって事か?」
「そうですよ。
2、3年の洗礼対象者をことごとく攻略している相川さんを好きになる事が出来たなら、自分の人間としての器が広がる様な気がするんです」
「攻略って言うけどな?
みんな別にハルの事、恋愛対象で見とる訳ちゃうんやけどなぁ?
ハルに関する恋愛ネタは9割デマやから、あんま噂鵜呑みにすんなや?」
『ちょ…っ、待ってよ、9割って何?
翔太と智兄以外にも誰か噂されてるのか!?』
正解の1割が翔太だとして。
智兄以外の残り8人って一体誰なんだよーーー!?
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