青蓮学園物語
5
流石にその状態になった僕を放置出来なかった三人は、始業のチャイムが鳴り響いた途端慌てて周囲に指示を出す。
野次馬を解散させ、その場にいたクラスメイトに優と碧が戻ってきたら合流するようにと伝言を頼んだ後、連れて来られたのは。
「はぁ…っ、生徒会権限なんて初めて使ったよ。
こういうのを職権乱用って言うんじゃないの??」
「煩いな、こんな時使わなかったらいつ使うんだよ〜〜?
大体ねぇ、あの副会長が悪いんだから会長なら黙って責任とれば?」
僕に気を使ってか、若干小さめの声でやり合う二人の前で。
涙は止まったものの未だ気落ちする僕を膝抱っこする翔太と。
それに甘んじてコアラの様に正面から翔太に抱きついた状態の僕が居た。
「どうせ今日はテストの返却と答え合わせしかせぇへんから問題ないわ。
あ、晶、俺動けんし、悪いけどコーヒー入れてくれんか?」
慰めると称して人目も気にせずキスを落としてくる翔太に、少しずつ落ち着きを取り戻してきた僕の羞恥心が限界を迎えそうな時。
生徒会室の応接セットの一角で完全に二人の世界を作って寛ごうとする翔太(と僕)に、あきちゃんと南条がキレた。
「なにこの馬鹿ップル!!
翔太君ってそんなキャラだったのか!?」
「翔太の幸せオーラ、最近ちょっと腹立つ時あるんだよね……」
『…っ、ごっ、ごめんなさい…っ』
慌てて離れようともがくものの。
翔太にしっかりと抱き寄せられている為、数10センチ程上半身が離れただけで。
諦めて首だけ振り返ると、怒りを隠せないあきちゃんの隣では南条が呆れ顔でコチラを見つめていた。
そんな不穏な空気の中、翔太は一人飄々とした態度で口を開く。
「可哀想な目に遭ぅたんやから、ちっとぐらい甘やかしてもバチは当たらんやろ??」
「誰もはるちゃんの事は言ってないだろっ!?
はぁ…っ、少しは翔太も不幸になったらいいのに〜っ」
ため息混じりに告げるあきちゃんの声は半分本気で。
今後は出来るだけ人前でベタベタ甘えるのはやめよう……と思う僕の決心とは裏腹に。
「あ、無理無理。
だって俺ハルが傍に居るだけで十分幸せやもん。
碧来たらちゃんと離れるし、もうちょいこのまま居らして?」
そう笑顔で告げた翔太に対して、もう誰も反論する気力はなかった。
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