青蓮学園物語
3
うぁっ、もしかしてすっごくマズイ状況じゃないか、これ?
目立つのが嫌いな楓からすれば、学園でもTOPクラスの知名度と人気を誇る智兄と接触するのは不本意だろう。
小説みたいに親衛隊に制裁を加えられる事はないだろうけど、智兄のファンから嫉妬される可能性はゼロではないのだ。
智兄がこっそり(堂々と寮監室に居座ってるけど)如月さんと付き合うようになって。
ファンとの間に肉体関係が消滅したからとは言え、急にファンを止める人も少ないんじゃないかなぁ?
僕が傍にいても何も言われないのは、智兄が僕の事を家族同然の付き合いだと公言してるからで。
その上、今後僕に何かした奴は智兄自身を敵に回すと思えと、例の狂言誘拐のあと智兄のファン経由で宣言したらしい。
今の今まで気付かなかったけど、ぐるりと見渡せば遠巻きにこちらを気にしてる人がかなり居る。
今後は公の場で、僕に話しかけない様にしてもらおう……そう僕が決意していると。
「ずいぶん春樹と親しいみたいだけど、今まで寮で一緒に居るところを見た事ないね?」
イキナリ智兄に話しかけられた楓は、一瞬驚いた顔をしたものの。
「気にしなくても、ただのクラスメイトだから大丈夫ですよ。
春樹には俺なんかより、もっと親しい友人が沢山いますから」
「ふぅん……?それで名前なんて言うの?」
冷静に関係を否定する楓の台詞をスルーして、智兄はさらに問い掛ける。
智兄からそんな風に興味を持つのって珍しい……驚いてその表情を確認すると。
『……楓、ご愁傷様…っ』
「はぁ?」
僕が告げたお悔やみの言葉の意味がわからなかった楓が、間の抜けた返事を返す。
だって智兄が…っ。
「なぁ、ちょっとで良いから眼鏡外してみてよ?」
大好きなおもちゃを見つけた子供のように、目をキラキラさせ満面の笑みを浮かべてそう告げた。
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