青蓮学園物語
8
「……それなら、プリン全部やるからそのパイ半分くれよ?」
僕の言動に一瞬戸惑った後、楓が提案する。
『えっ、それだと楓が損するよーっ!?』
「損得なんかねぇよ。
俺は春樹ほど食い意地張ってないから平気だ。
正直よくそれだけ甘いものが食べれるなぁって、逆にいつも尊敬するよ……」
普通一個食べたら十分だろ?と首を傾げる楓を見て。
それなら気が変わらないうちにと、僕は急いでマロンパイの袋を開けるものの。
『うぁ…っ、ご、ごめんなさいっ!
パイ生地がサクサク過ぎて、どんどんぼろぼろになる…っ』
1分後には、粉々になって無残に形の崩れたパイが僕の手元にあった。
とりあえず歪なりにも、半分に割る事は出来たけどね……。
絶対呆れてるだろうなぁ?と、恐る恐る楓の顔色を伺い見ると。
じっと真剣な顔でコチラを見ていた楓と目があった。
もしかして楓って目の前の人が真剣になると、一緒に肩に力が入るタイプなのか!?
それなら多少失敗しても怒ることはない…よねぇ?と少しだけ安堵する。
『ぐちゃぐちゃだけど、どっちが良い?』
「……春樹」
せめてもの罪滅ぼしに楓に好きな方を選んでもらおうと、笑顔を取り繕って問い掛けると。
遠慮がちに伸びて来た楓の指が、そっと僕の髪に触れた。
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