青蓮学園物語
2
「まぁええわ……コーヒー淹れたるから、ハルも起きてこっちおいで?
そうは言ぅても所詮インスタントやけどなぁ。……ハルはフレッシュと砂糖使うん?」
『あっ、コーヒー1に対して牛乳2の割合でお願いします……』
僕の返事を聞いて、そんなんホット淹れても生温くなるやん……と呟きながら、翔太は簡易キッチンの方に消えた。
ベッドから這い出したところで、先ほど飛び乗ってきた少年と目が合う。
少し襟足が長めで、癖毛なのか軽くウェイブした明るい茶髪が印象的だ。
「良かったら、こっち来て座ろうよ?」
誘導されるまま僕がテーブルの前に座ったのを見計らって少年は口を開く。
「僕は【波多野 晶(はたのあきら)】って言うの。
はるちゃんって呼ぶからあきちゃんって呼んで?どこかに夏と冬も落ちていないかなぁ♪」
そしたら、戦隊モノになれるね?と言って波多野は爆笑した。
えっと……僕の意見なしで、ちゃん付け確定ですか?
「んでそっちの奴が〜〜「翔太の友人の【結城 碧(ゆうきみどり)】だ、空手部に所属している」」
波多野の声を遮るように告げた結城の台詞に驚く。
和服が似合いそうな優しい雰囲気の結城が、武道をやっているようには見えない。
「キミドリちゃんって呼んであげて?」
「……っっ!誰がだっ!」
波多野はまだ笑い続けている。
どうやらかなりの笑い上戸らしい。
「名前は好きに呼んでくれて構わないが、キミドリはやめてくれ」
『僕は、「はるちゃんだよね〜?さっき寝てるあいだに翔太から聞いたよっ」』
僕も自己紹介しようと思い、話し出そうとしたところを波多野の声によって遮られた。
「はるちゃんっておとなしいねぇ?もしかして碧ちゃんと一緒であんまり喋らない子なのかなぁ?
まぁそれでも、僕が勝手に話かけて喋るんだけどね〜」
「ちゃうやろ?晶が必要以上に喋りすぎやねん。
ハルは初対面の相手でちょこっと人見知りしてるだけとちゃうんか?」
『あっ、ありがと…っ』
いつの間にか戻って来ていた翔太は、そう言いながら僕に温めのカフェオレを手渡してくれる。
確かに人見知りはあるけど、どちらかと言えば喋るタイミングを逸してるだけなんだけどな?
「喋り過ぎって…。そんなの翔太にだけは言われたくないよーっ!そっちは関西のおばちゃん並に喋るくせにっ!」
むしろ翔太と波多野が喋りすぎなだけで、結城の口数は普通なのかもしれない。
そう思いながら、僕は受け取ったカフェオレを黙って口にした。
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