青蓮学園物語
2
自分の身に何が起こったのか、よくわからない状態で呆然としていると。
そいつは僕の両肩をがしっと掴んで、自分の方に180度ぐるんっと方向転換させた。
驚く僕の目の前には、如何にも走ってましたという様にランニング上下を着た僕より背の高い男が、人好きしそうな笑みを浮かべていた。
短い髪を金髪に染めて立たせ、左耳にはシルバーのピアスを2つ。
よく見るとたれ気味の左目元に、小さい泣き黒子がある。
急な展開についていけない僕の事は全く気にも留めずに、そいつは笑顔で自己紹介を始める。
「【佐藤 翔太(さとうしょうた)】っていうねん。
佐藤も翔太も生まれた年に一番多かった苗字と名前やから、そこらへんにゴロゴロおるけどなぁ?
意外と関西では佐藤って奴は、そんなに言うほど居らんのやで?
たしか一番多い苗字は田中やったかなぁ?まぁ、そんなん今はどうでもええねん。
とりあえず俺のことは翔太って呼んでな?」
全く知らない奴から、いきなり浴びせられた長文の関西弁に僕は驚かされた。
生で関西人に会ったの、生まれて初めてだよっ!
「俺、陸上部で中長距離走っとるねん。
のんびりジョギングしとったら、如月ちゃんが見たことない子連れとるの見えたから。
気になってついつい方向転換してもぉたわ」
そういって僕の顔をまじまじと見つめてきた。
「ふ〜ん相川って言ぅんや。下の名前はなんて言ぅのん?
うっわ、髪の毛さらさらやな〜。ほんで顔ちっこぃのに、目ぇおっきくて茶色いし。
アカンめちゃめちゃ俺好みやわvV ホンマびっくりした顔も可愛ぇぇなぁ♪」
うぁ、もしかしてホモに初遭遇かっ!?
ホントにいたよ、母さーーん!!と心の中で叫ぶ僕。
こちらの気も知らないで、関西弁でのマシンガントークはさらに続く。
「如月ちゃんの隠し子な訳ないやろうしなぁ?もしかして転校生か何かなんか?」
「隠し子って私はまだ26だっ!12才の時の子供なんて普通に有り得ないだろう!?」
「俺3人兄弟の末っ子やし弟欲しかったんよね。
なぁなぁ、如月ちゃん?この子俺もらってもえぇか?」
ひぃ…っ、犬の子じゃあるまいしっ!
人間はそんな簡単にあげたり貰ったりするもんじゃありませんからーーっ!!
「あ、そういえばお前今1人だったな?
急にやってきたから部屋とかまだ決めてなかったんだが……よかったら面倒みてやってくれるか?」
僕の心の叫びもむなしく、如月さんはあっさり承諾した。
「やったっ、えぇに決まってるやん!ほんま大歓迎やわvV」
佐藤に出会ってから約5分。
僕はほぼ何も言葉を発せないまま、あれよあれよという間に未来が確定したらしい。
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