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双剣士の腐れ縁 1

 結論から言えば、二人が道端で行き合ったのは単なる偶然であった。
 紅梅は、ちょうど仕事の関係でその町に立ち寄り。鴉は、白鳥が採取したい植物がこの辺りにしか生えていないということで滞在していた。
 だから、二人が同時期にその町にいたのは、やはり偶然だった。

「……あ」

 最初に声を上げたのは、鴉だった。疎らな人影の中、前方に見覚えのある梅の色を見つけたからである。
 そしてまさにその件の人物が、その声に反応して振り返った。隣には、当然コンビを組んでいる紫色の竜騎士の姿もある。

「あれ、鴉?」

 竜騎士も、振り返った。

「おえー、久しぶり」

 いつものように、どこかぼんやりとした口調である。ちなみに、別に吐き気を催しているわけではない。
 どうやらかなり眠いらしく、瞼が半分落ちかかっている。大方、ちょうど仕事が終わったところなのだろう。

「わー、コウちゃん、久しぶり!」

 鴉の隣で珍しく黙々と歩んでいた白鳥も、目を輝かせて駆け寄っていく。
 こちらも徹夜で採取作業をしていたため、あまり本調子ではない。

「偶然だねー。でも、白鳥。なんか目、赤くない?」
「うーん、徹夜明けだからねー。鴉と採取に来たんだけどさ、ちょっとアテが外れちゃって」
「じゃあ、もう帰っちゃうの?」
「いやー、もうちょっと粘るつもり。ゴキブリモドキって、この辺にしか生えてないんだよねー」

 いつも思うが、何故そのゴキブリモドキとやらにそんなにこだわるのか。
 内心首を傾げながら、鴉は少女二人の後ろで首をゆらゆら揺らしている紫苑に目をやった。半分以上寝かかっているようで、大事な得物であるはずの槍を杖代わりに何とかその場に立っている状態だ。
 と、それに気付いた白鳥がひょい、と紅梅の横から顔を出した。

「あら、しーちゃん死にそうだよ」
「え? わ、紫苑! まだ寝ちゃ駄目だよ!」
「うーん……」

 慌てて支えに行った紅梅に返事はしているものの、意識自体はほぼ飛んでいる。

「……俺、宿まで連れて行こうか?」
「ううん。そんなの悪いよ。どうせ、もうすぐそこだし」
「なら、私が連れていく!」
「は?」

 紅梅と鴉の声が見事にハモったところで、白鳥が足取りも軽く飛び出して紫苑を支える。
 しかし、紫苑はそこまで低身長ではない。寧ろ、男としても高い部類に入るだろう。
 それを女としては身長が低い白鳥が、到底支えきれるわけがないのだ。
 が、一体何の手品なのか、少女は器用にバランスを取って紫苑をきちんと支えている。驚く二人の顔を見て、してやったりと言わんばかりの笑みを浮かべた。

「私ももう眠いからさー、ついでに寝てくる。鴉は、必要な道具でも買ってきてよ。コウちゃんも、まだこの町にいるんでしょ?」
「う、うん。どのみち紫苑も疲れてるみたいだから、もう少し休んでから出るよ」
「じゃあ、二人で買い物行っといで。私はもう眠いから」

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あきゅろす。
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