ショート 紡がれしもの(平新) 色々と考え事をしながら歩いていた道で、不意に子供達が駆け抜けていった。 「×××せなあかんでぇ」 「×××やねんぞー」 新一は思わず振り向いた。 子供が4人で紅一点。 まるであの頃の少年探偵団を思い出す…… けれどもその言葉は皆、バリバリの関西弁で。 新一は笑みを浮かべた。 そうして何となく、平次が子供の頃もあんなだったのかな、なんて思った。 そうするとあの女の子は和葉? 小さな胸の痛みと共に、自分の知り得ない彼の子供時代を想像してみる。 すると前方から『今』の大人の平次が駆けてきた。 「新一、道解ったか?」 「あぁ、この街も大分歩き慣れたからな」 平次が生まれ育った寝屋川。 何だかんだと来る機会が増えて。 そうして二人は並んで家へと歩き始めた。 「……そーいやさ、静華さん、おまえの成長ビデオ、撮ってたんだよな?」 「そーやけど…何でや?」 「それ見たい」 平次は照れた様に答えた。 「却下。そんなん羞恥プレイや////」 「何でだよ、オレでも駄目なのか?」 新一は殺し文句を返した。 お陰で平次が一瞬黙る。 「披露宴とかする相手だったら、どーせ編集されたんだろ?覚悟しろよ」 笑う新一に平次も負けずに言った。 「ほんなら、おまえのオカンが撮ってくれてたおまえのビデオと交換な♪そんならええで」 今度は新一が頬を染める。 「お互い様やもんなv」 にこにこと笑う平次に、新一はしゃーなしみたいに頷いた。 「しょーがねーなー……ちょっと時間掛かるぞ」 何せ自分の両親は海外だ。 しかもしょっ中移動している彼等は、今何処に居るのやら。 結局、両方が揃ったら二人で一緒に見ようという事になり。 やがてその時、平次は中学時代に自分に影響を与えた探偵が、工藤新一その人だったのだと実感する事となった。 「……やっぱオレ等の絆は相当深かってんなー……只モンちゃうで」 同じ所に同じく銃創が出来るなんてのも、現代日本では貴重な一致であるのだし。 「……只の探偵二人だろ」 照れ隠しか、相変わらず身も蓋も無い事を言う。 平次はニンマリと笑った。 「そんで、只の雄同士やしな?」 そうして新一にキスを仕掛けた。 唇が離れた時に、新一はまた可愛くない事を言う。 「テメーみてぇな絶倫に言われたくねー」 「ついてこれるおまえにもな?」 「バーロッ、誰がそんなにし……ん…っ……」 すっかり臨戦態勢で唇を塞がれ、新一は観念して平次の背に腕を回した。 話はもう終わり。 そうして二人は、暫し野性の獣に戻った。 ───────おしまい。 [次へ#] [戻る] |