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七色学園
期待(h)

それからちょっと経って、春がきた。



「しかし、凄いとは思ったけど金賞とはなぁ〜」
「俺が一番びっくりやって」
「せやな!これで美術部存続やし!」
「そやね、」

ちょっと心配だった。存続が決まったら北村くんが辞めてしまわないか、

「あの、北村く「けんちゃん」
「…え?」
「みんな俺んことけんちゃんって呼ぶからはいども!」
「あ、うん…けんちゃん…」
「よし!気になってん。俺はいどってよんどんのに北村って呼ばれんの、」
「ごめんな…」
「えぇって。これから呼んでくれれば。」

けんちゃん、

ちょっと親密になった気分やった。

「なぁ、はいどって騒音気になるタイプ?」
「ん?大丈夫。」
「ギター弾いてえぇ?」
「ギター!」

ギター弾くんや。そういえば、軽音と掛け持ちとか言ってた気がする。

「えぇよ。けんちゃん、の、ギター聴きたい」

しまった。けんちゃん、って強調してまった、
気付かれないやろか。

「ほな弾くな。」

大丈夫そうだ。…ちょっと残念だけど、

彼の奏でる音は独特で、

凄く惹かれた。

詩を、つけたい…

絵を描きながら、頭の中ではそのフレーズに詩をのせていた。


それから数日、俺は機嫌のいいときほとんどけんちゃんの曲を口ずさんでいた。

「〜♪」

「はいど?」
「うわっ!びっくりした…」

急に名前を呼ばれて振り向くと、首を横に傾げたけんちゃんがたっていた。

「その歌…」
「あ…、勝手に歌詞つけちゃったん。…ごめんなさい…」

怒られると思ったのに目の前の彼は目をキラキラさせている。

「はいどって作詞するん!?」
「まぁ…ちょっと」
「今のってこないだの俺が弾いてた曲やんな?歌って!」

質問攻め、彼のノリにおされてまう。

「でも、はずかし…」
「はいどの声、聞きたいねん。」

真剣な目、
そんなみつめられたら恥ずかしい。

ぜったい、顔赤いて…!!

「けん、ちゃんが…ギター弾いてくれんなら…」

目をそらす。
これ以上見てられへんやもん、

「わかった!!」

けんちゃんはギターを取りだし、いそいで調律し始める。

「よし、はいどは適当に歌ってな?」
「ん、」

前奏がはじまる。
俺の気持ち…なんて彼は気付かないだろう。だから、

「♪―――…


すごい、ひとりのときとは違う音がする。

けんちゃんの音、

ここちいい。この空間みたい。


「―……けんちゃん?」
「え?あ、あぁぁ〜!!」

やっぱりイヤやったんやろか…

「ごめんなぁ、感動しちゃって、」
「…感動」
「すっごい綺麗な声やったん。」
「そ、かな」
「ん。ドキドキしてた」


ドキドキしてた

その言葉にドキドキした。

ドキドキというか胸の奥がキュンと痛くて、

こんなに乙女な自分に落胆した。


期待


なんで期待なんかしちゃってんの…?俺。

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