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短編
「私を」

私はあの子が好きだった。
かわいくて優しくて、私より遥かに頭が良くて、だけど少しだけ弱い、そんな子。
少しだけ弱いという少ない欠点さえ、ある種の美点だった。
女の子はあの子と仲良くなりたがったし、男の子も密かに気にしていたと思う。
異性の事はよく分からないけど。
私としても、あの子が楽しそうに話すのが嬉しかった。
私の友人とあの子が仲良くなるのが嬉しかった。
あの子といると楽しく笑えた。

同じ趣味を持ち、似たような思考を持ち、なるべくしてなったような友人同士である私達は、見た目では全然違った。

私はかわいくもないし優しくもないし、頭が良いわけでもない。ただ、私はあの子よりも、遥かに強かった。力ではなく精神的に。
昔から頼られる質だった。小さいときは男の子を怒鳴りつけた。先生からも好かれた。
いじめを受けた事もないし、仲良い友達もあの子を含めてそれなりにいた。
そうして出来上がったのは、大人しくて強い、且つプライドの高い大人びた私だった。

私とあの子はよく同じ人を好きになった。
大概は私が諦めた。
あの子が幸せなら、それもまた良いと思った。

でも今は、違った。
私が諦められなかった。
あの子から話を聞いたとき、いつものように諦めようとした。

無理だった。
どうしても無理だった。
好きで好きで堪らなくて、あの子と話しているのを見るのは嬉しいのに、とてもつらかった。
あの人の目がこちらに向かないことも、理解していたからなおのこと。私は聡いようだった。

どこが好き?って言われても答えられない。わかんないし。
ただ近くにいると嬉しかったし、話せたときは1日楽しかった。
誘いを受けると胸が踊った。

諦められなくても、隠し通す自信があった。私はそういう子だ。
感情が垂れ流しになるあの子とは違う。
けれど、あの人はあまりに優しい。私にもそれを向けてくれた。隠し通す自信も、今では危ない。
私は未熟だった。隠しきれないなんて。


ごめんね、ごめんね。許して、なんて言わないよ。だけどお願い。

私を嫌わないで。

ごめんなさい、ごめんなさい。諦められないよ。ごめんなさいごめんなさい。

私は強いから泣かないけど、あなたはきっと泣いてしまうよね。ごめんねごめんなさい。
だから泣かないで。

私を嫌わないで。

あなたから嫌われたら、もう生きていたくないから。
人はそんなの重いって言うけど、こればかりは本心だから。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
あなたに直接謝れない私でごめんなさい。
未熟で子供な私でごめんなさい。
隠しきれなくてごめんなさい。
諦められなくてごめんなさい。
謝ることがいっぱいだね。ごめんねごめんなさい。

謝るよ、全部謝るから。
許して、なんて言わないから。







































私を嫌わないで。

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あきゅろす。
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