精霊輪舞〜姫君見聞録〜
〜一滴 相対姫君〜
深い森を抜ければ、そこはこの世界の一つの王国。
道を外れると、この国の姫君の居城がありました。
「一滴 相対姫君」
「アリア。紅茶、どっちがいい?」
「じゃあ、蜜柑の方。」
「はーい。」
交わされた言葉は、同じ人物が喋っているかと思うような、同じ声。
会わせた顔もほぼ同じ。
目の色が違うだけだった。
「はい。アリア。」
「ありがと。ルティ。」
彼女達は、
アリアス・フィティーナ・レンジェクト。
ルディア・ティルード・レンジェクト。
レンジェクト王国。精霊世界の大国であるこの国の双子のお姫様。
しばらく同じ顔を向き合わせると、不意にアリアスの方が、白い封筒を取り出した。
「あ、アリア。それ・・・。」
「うふふ。そうよ。新しいお仕事。」
二人とも、にこにこしながら、順番に味の違う紅茶を口に着けた。その間に手紙を順番に読んでいく。
「なるほど。確かに大問題。」
呟きを溢したルディアの後ろに、水色をした女の人が現れる。
『確かに、危ないわね〜。』
「どう思う?スィリーセイ。」
後ろに人ならざるものが現れたと言うのに、ルディアは落ち着き払っている。
「セイレーンはどう?」
アリアスの後ろにもそれが現れる。
『そうね。何かあるとすれば、あいつなんだけど。ねぇ。』
『そうね〜。あまり関わりたくはないんだけどね〜。』
明らか人ならざるものである、スィリーセイとセイレーン。
彼女達は、精霊。
それも、精霊王だ。
「まさか・・・・連続発火事件なんて。」
「連続放火事件なら警察なんだけど。」
アリアスが言うと、それに合わせるようにルディアが言う。
二人の間ではそれが定着しているようであった。
「宮廷精霊契約士って大変ね。」
くすりと笑ったルディア。
それに追随するようにアリアスも笑った。
精霊王であるスィリーセイとセイレーンが、何故、ルディアとアリアスと一緒にいるか。
それは、五年前の「精霊大量消失事件」が原因だった。
瀕死の状態にあった二人の精霊王を、二人の王女が精霊契約術を持って救ったのだった。
以来、彼女らは二人の王女に着いている。
力を貸す代わりの、代償、仲間を見つける事を条件に。
「さて、ルディア。」
「えぇ、アリアス。」
珍しく本名で呼んで、お互い顔を見つめる。
同じ勢いで、くるりと後ろを向くと、精霊王と向きあう。
「大丈夫よね。水の精霊王 スィリーセイ。」
『もちろんですわ。水王 ルディア。』
「行きましょうか。海の精霊王 セイレーン。」
『えぇ。海王 アリアス。』
「「精霊に純なる心を・・・。それが契約王の務め。参りましょう。我が契約精霊。」」
『『御意に。我が契約王。』』
全く同じ台詞を同じリズムで紡ぐ。
セイレーンとスィリーセイもそれに続いた。
扉を開けて物語を紡ぎ始めた。
二人の契約王
其は
清純なる心を持ちし王女
消失の危機にある精霊達、神言葉を持って救わん
精霊史 第一章 第一節 「契約王」
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