その輝きは永遠に
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『1-A 凰炎 薫さん。学園生徒会の方々がお呼びです。至急聖人館までお越し下さい』
そんなことを校内放送で流されるから、視線が一気に私に注がれる。
……気まずい。
速く行かなきゃと足を速める。
途中、マーレと目があったけど、無視しておいた。
恐らく、彼女も生徒会のファンなのだろう。
とりあえず私は、その聖人館とやらに急いだ。
聖人館は、学園敷地内のほぼ中心にあった。
「ここが……聖人館」
セキュリティがしっかりしてるのか、警備員さんのような人がいる。
名前を告げたら、重たそうな扉を開けてくれた。
ちょっと身だしなみを整えて、足を踏み入れると、西洋のお屋敷みたいにカツーンと音がなった。
ちょっと新鮮な感覚を楽しみつつ、奥へ進むと、一本の柱が見える。
柱の前にいる、女の人も。
「ようこそ。聖人館へ。貴方が、凰炎 薫さんね」
はっきりとした、透明感のある声がかけられる。
目鼻立ちもはっきりした美人な人だ。
「あ、はい。凰炎です。それで、私ごときに何のご用事でしょうか?」
畏まって挨拶をすると、目の前の女の人は爽やかに笑った。
花が舞うような笑顔だった。
「そんな畏まらなくていいよ。呼んだのはこっちなんだから」
とりあえず、言う通りにしておく。
偉い人には、逆らわないのが一番だから。
でも、どうして私を呼んだんだろう?
なんかしたかな。私と学園生徒会の接点なんて、兄さんがいた事ぐらいだ。
この女の人も学園生徒会の人かな。そうだとしたら、何でわざわざ?
悶々と考えてると、また声を掛けられて、生徒会室まで案内すると言われた。
「この、聖人館は円形でね、この柱を登って上まで行くの」
「こ、この柱って……」
「あ、もちろんエレベーターだから安心して」
柱は真っ白で、大人が五人ぐらい手を繋いで、一周するくらいの太さがある。
私はそれを、ずっと見上げて首が痛い。
屋根が遮って上がどうなってるか、分からないけど結構な高さがあった。
階段じゃなくて良かった。
「じゃ、こっちよ」
手を差し出されて、戸惑う。
女性なのに男性的な所作だ。
振り払う訳にも行かず、とりあえず手をとって、連れていかれる。
白い柱自体がエレベーターみたいで、柱の中に入ると、もう一面が真っ白で変な気分になる。
ヤバい研究所みたいだ。映画で見たことある感じ。
エレベーターのなかで、隣の人を見やると微笑をたたえている。
私よりも背丈があるから、見上げる形だけど、改めてよく観察してみる。
ライトブルーの髪を高い位地でポニーテールにしている。
中性的な容姿で、耳にサファイアのピアスをしている。
それが、ライトブルーの髪とよく合っている。
不躾にならない程度に観察してみる。
莉菜の言うように、見目はとてもいいみたいだ。モデルみたい。
そんなことをしているうちに、エレベーターが止まった。
自動ドアが開くと、見えたのは大きい窓。
四階ぐらいの高さからの、絶景。
自然の中に建てられた学校だからか、綺麗な景色だ。
「わ、すごい……」
景色に圧倒されていると、後ろから柔らかい声がかけられる。
「君が、凰炎薫さんだね」
誰もいないと思っていたから、驚いて後ろを振り向く。
視界に入ったのは、八人の男女。
全く気配がしなかった。
見事な迄に見目麗しい。
美男美女がここまで集まるとこなんてそうないだろう。
さっきのライトブルーの髪の人がそこに加わると、色々圧倒される。
尚も目を見開いてると、さっきと同じ声が真ん中の男の人からした。
「初めまして。凰炎 薫さん。僕がこの、彩人学園の生徒会長、3-Bの扇歌陸也です。よろしく」
歩み寄って来て、にこやかに挨拶される。
柔和な微笑みは、柔らかな造りをしている彼の顔によく合っていると思う。
しどろもどろになりながら、私も自己紹介をする。
ここに呼んだ理由を別としても、学園の生徒のトップだろう。そもそも先輩だ。ちゃんとするべきだと思う。
「1-Aの凰炎薫です。初めまして」
自己紹介すると、残りの八人の人のもとに促される。
ちょっとした段差を紳士的に誘導され、どうにもくすぐったい。
「へぇ〜、この子が葵様の妹?確かに似てるね」
青灰色の髪に紺色の瞳をした人が、私の目の前に来て言った。
高校一年にしては背の低い私は、おそらく三年であろう人を、見上げなくちゃ顔が見えない。
この人もまた、かっこいいと思う。
「あ、俺、校外活動執行部長の3-G 平颯人ね」
こんな言い方、多分失礼だけど、大雑把な笑い方だなって思う。
けど親しみやすい接し方だとも思う。
「ちょっと颯人!突然困っちゃうでしょ!ごめんね、薫さん。馬鹿が迷惑かけて」
「おい!」
平先輩をまた観察してると、薄桃色の髪と薄紫の目をした女の人が怒りながら平先輩を押し退けてこっちに来た。
柔らかい印象はすごく安心出来る。
色素が薄くて優しいイメージだけど、割と怒りっぽい性格みたい。
「私は、2-Cの桜凛。よろしくね。役職は、学園イベント執行部長よ」
私の方を向いて、にっこり微笑んだ。
普通に笑うとイメージ通りの人だ。
桜先輩が、私を質問責めにしていると、桜先輩が後ろに引き戻された。
「きゃ!何すんのよ!郷!」
「誰か分からん呼び名はやめろ!」
多分今までの人の中で、一番長身。
ほんと首痛い。
かっこいい人は慎重も高い。
「桜が迷惑をかけたな」
柔らかな微笑みはなんかお兄ちゃんと呼びたくなる感じ。
漆黒の髪と金色の目が優しそう。
「初めまして。俺は郷榮灰。風紀活動長だ」
なるほど。郷榮だから郷。確かに誰か分からないわ。略しすぎだ。
「あんた達。サボってたら、サリアナの鉄拳が来るわよ」
さっきのライトブルーの髪の人が言った。
サリアナって誰だろう。
「あぁ、自己紹介が遅れたね。私は凪河天音。3-Fで副会長だ」
あ、副会長だったんだ。ライトブルーの髪と、それよりも薄い青の瞳。
中性的な容姿だから、可愛いよりもかっこいいの方が、誉め言葉としては合ってるかもしれない。
「おいおい、サリアナの鉄拳って軽く壁、ぶち抜くぞ。そんなんで人殴ったら死ぬだろう」
それは確かに危ないね。本当かどうかは別として。
「あの、サリアナさんて……」
一応、どんな人か見てみたい。
恐らく女性だろう。
「あぁ、後ろにいるよ」
言われて歩いて行ってみるけど、誰もいない。
不思議に思っていると、どん、と後ろから押された。
「きゃっ!」
「あはは、びっくりした?あたし、サリアナって言うの。サリアナ・クヴェイユ。よろしくね」
後ろを振り向くと、金色が目に入る。
クヴェイユってことは、外国人かな。
金髪の緑目ですごく綺麗。
ちょっと見とれてると、サリアナの後ろにまた別の人がいた。
「初めまして。薫さん。僕は、クロウズ・クヴェイユ。サリアナの双子の兄だよ。役職は男子部活動執行部長。サリアナは女子部活動執行部長なんだ」
人のいい笑顔を浮かべてる。双子か。
金髪の青目。二卵性だろうけど、本当そっくり。
「あたしは1-Cだから遊びに来てね!」
「僕は1-Dだよ」
この二人は一年なんだ。
生徒会に一年生もいるんだね。
「よろしく。サリアナにクロウズ」
一年みたいだから、そんなに畏まらなくても大丈夫かもしれない。
なんだか親しみやすいかんじ。
自然と顔を綻ばせると、凪河先輩もなんか笑ってた。
「さて、あと紹介してないのは……」
そこで会長さんが口を出す。
部屋の中を見渡す動作がどこか幼い印象。
「杏樹と雷人ですよ。会長」
平先輩がそれに答えると、ちょっと苦笑いしてた。
「あの、二人か。一人はほっとくと喋らないしもう一人は自由だし」
ほっとくと喋らないって無口なんだろうな。
もうひとりの人はたぶん破天荒な感じなんだろう。
そんなことをぼーっとしながら、考えてたから気づかなかった。背後の黒髪の人を。
いきなり重い声が掛かる。
「凰炎さん」
「ぅわっ!」
ぐるっと勢い良く振り向くと、目に映るのは黒。否、黒髪を持つ白の女の人。
「鷲見 杏樹です。役職は会計。2-Hよ」
あんまり表情ないけど、多分笑った。と思う。
艶やかな黒髪に同じ色の目。でもめちゃくちゃ美人な人だ。長い髪が神秘的。
占い師とかに良くいそう。
彩人学園の制服もちょっと改造されてるのか全体的に黒い。
「あ、見つけた」
他の生徒会の人が一斉に言う。見つからないよう人なの。この人。
でも、慣れてるみたいで、あんまり気にした風はなかった。
「杏樹。雷人は?」
それどころか、もう一人のことを探している。
長い付き合いなんだろうなぁと思った。
「雷人はそこよ」
そう言って、鷲見先輩が白い指で私の後ろを指す。
「え……またうしろ?」
全くホントに不可思議なことばかり。
後ろは多分誰もいないんだけど。
振り返ろうとすると、トン、と背中を押される。サリアナに押された時よりだいぶ優しい。
「ここだよ」
甘くて優しい美声。ちょっとドキッとする。耳元で聞くとかなりびっくりする。
そんな私を見て、美声の持ち主はクスクス笑っていた。
緑の髪。原色じゃないけど、ある程度の濃さだと思う。緩くウェーブのある長い髪を揺らしている。
瞳は常磐色。
「俺は羽在雷人。よろしく。2-Aだよ。役職は書記」
その美声を響かせて紳士的に自己紹介。
文句無くカッコいい。健全な現代女子なら絶対惚れるね。
素敵な男性だと思う。
「さて、これで全員だよね」
会長の柔和な微笑みは真剣な顔に早変わり。
会長らしい笑みだと感じた。
「凰炎薫さん。君をここに呼んだ理由だけどね」
少し躊躇う。やっぱり考えないようにしてたけど、無理か。
「単刀直入に言うよ」
ごくっと唾をのむ。
それを聞くのが怖かった。
何故?変わってしまうから。
私ガ、ワタシでいラれルカシンパイ。
だから、その言葉を聞きたくない。
「君に、学園生徒会の学園議長になってもらいたい」
会長の目にはさっきの柔らかさはない。
けれど、追い詰められた表情に、胸が締め付けられた。
お兄ちゃんが言ってた。
『人ほど醜くて、汚い動物はないんだよ。だから僕は、人を助けたいんだ』
瞬間的に理解した。
何故か分からない。でも、私は何か知っていた。
彼らがやっている事は、まさしくお兄ちゃんの言葉そのものなのだと。
少女は人生の分かれ道に立った。
その選択一つで運命が変わる。
たった一つの助かる道。それを選びとるのか。
道は、ショウジョにユダネラれた
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