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その輝きは永遠に
〜決意〜
話を聞いて決意した。

ショウジョハイツカアニニアエルコトヲイノッタ。










「〜決意〜」










「あの怪物は、平たく言うと、人間の感情の具現なんだ。」

学園生徒会に入る事と引き換えに、全てを教えてもらうことにした私、凰炎 薫は、生徒会の会長である扇歌 陸也先輩に連れられてある場所に向かっていた。


「人間の感情の具現?あの気持ち悪い肉塊が?」

私が見た怪物は赤黒く変に鼓動していた。
黄色の目らしきものに睨まれたら動けなかった。
まだ、鮮明に思い出せてしまう。

再び血の気が引いた私の顔を見て、生徒会書記の羽在 雷人先輩が耳元で心配した声を掛けてきた。

「大丈夫?アレ、思い出さなくていいよ。」
耳元で掛けられた声が耳に優しくて、安心出来た。
アレって言うのはあの怪物だろう。
羽在先輩は、今日の戦いで一緒に居てくれた人だから。


「雷人。薫さん、口説くな。」
大丈夫だと返そうとしたとき、副会長の凪河 天音先輩が言った。

その言葉に、羽在先輩も反応した。

「聞き捨てなりませんね。副会長?俺はそこまで軽い男じゃありませんよ?」
「お前の、その声のせいだよ。阿呆。」
「毎日毎日、一般女子学生を口説いていらっしゃるのは、どちら様で?」

パッと見、目に優しい色素をお持ちのお二人は、中身は濃い色みたいです。


そこに、校外活動執行部長の平 颯人先輩が止めに入る。
「いい加減にしろよ。お二人さん。会長、もういねーぜ?」

その言葉にお二人は押し黙った。
その様子が可笑しくて、笑いを溢してしまう。

「お二人共、面白いですね。」
意味も無く、クスクス笑ってるから、訝しげな顔をされた。


あれ、て言うかさっき凪河先輩、女の子口説いてるって言わなかった?
レズ疑惑?


「あの、もしかして凪河先輩ってレz「さ!、行こ!薫ちゃん。」

質問しようとしたら、同い年で女子部活動執行部長のサリアナに遮られた。

「何するの。サリアナ。」
「薫ちゃん。世の中は知らなくて良いことがたくさんあるんだよ。」
「キャラ、違うよ。サリアナ。」
「あ、それだけど、あたしはサリーで良いよ。」
「何それ。魔女っ子?」
「うん。言うと思った。」

またその様子が可笑しくて笑いそうになる。


その楽しそうな、様子を見て、二年の桜 凛先輩が安心した風に話しかけてきた。

「さ、行きましょ。ホントに会長においてかれたわ。」
「そうですね。」









「遅かったね。何やってたの。」

目的地だと言う場所の扉の前に会長が待ちくたびれたように待っていた。

「ちょっとな。」
苦笑いで、平先輩が答える。

「まぁ、いいや。・・・薫さん。よく聞いて。これから僕達が説明、証明する事は全て事実。否定は出来ないよ。君が教えて欲しいと言ったこと。そして何より学園生徒会に入るなら、知らなくちゃいけないことなんだ。いいね?」


確認か説得かまたは聡しているのかは分からないが、会長は、やや下にある私の目線にあわせて、言ってきた。

私は挑戦的に笑って答えた。

「今さらですか?それに、もしも私が何も知りたくない、生徒会に入りたくないって言ったら、入らずに終わってましたかね?」
「終わらせる気はなかったな。」

私のそれに答えたのは、郷榮 灰先輩。確か風紀活動長。

私は苦笑いしか出来なかった。


「クロウズ。」
「えぇ。」
呼ばれて進み出たのは、サリアナの双子の兄。クロウズ。


そのクロウズが扉に触れると独りでに開いた。



「扉・・・?」部屋の中に入って一番最初に目に入るのは、白い大きな扉だった。

僅かな装飾もない。それが扉だと分かったのは、まわりの景色と分けるような、扉を象る線。それだけだった。


ふと平先輩と羽在先輩が進み出る。
二人で手をかけて扉を開ける。



扉の中は・・・




何も無い、それこそ何も無い、虚無の闇だった。



「何も無い・・・?」
「いいや。違うよ。」

私が、誰にともなく呟いた言葉に、羽在先輩が答える。

「何も無いように見えるけど、この扉の向こうは、ある意味の夢の世界なんだ。」
「夢の世界?何ですか?それ。願ったことが何でも叶うと?」
適当に言ったつもりだったのだけど、羽在先輩の整った唇から出た言葉は、にわかには信じられないものだった。

「そうだよ。願えば、何でも叶うんだ。自らの精神と引き換えに・・・ね。」
「まさか・・・。魔法じゃあるまいし。」

普通は信じない、否、信じられない。

すると、後ろから桜先輩の声。
「言ったでしょう?夢の世界だって。その扉の向こうはね、人間の希望と願望。世界中の人間全ての、望み通りの世界があるの。」
「それは、私のも?」
すると、先輩はこくんとうなずく。
「もちろん。わたしたちのもね。」

「その世界だと、何でも思い通りなんだ。無くしてしまった物を取り返すことも、時間を巻き戻すことも、姿を変えることもね。」
桜先輩の言葉に、続けたのは副会長。
さらにその後に、会計の鷲見 杏樹先輩が続く。

「だからこそ、危険。全ての人間が流れ始める。」
その言葉に変な違和感を覚える。

「全ての人間が・・・流れ始める?」
目を見開いて問い掛ければ、サリアナが答える。
「何故かは分からないんだけど、この世界と扉の向こうの世界の境界が最近曖昧なの。」

心底不安そう。

「境界が曖昧なせいで、この世界の人間が向こうに流れているんだ。」
声のした方を振り向くと、いつの間にか扉を閉めて腕組みをして立ってる平先輩だった。

「その影響で、扉向こうの世界でまで境界が薄くなって、いろんな人がいろんな場所に落ちてるらしい。」
その言葉の意味するところ。それすなわち・・・

「トリップってこと?」
「ま、そー言うこと。」
「非科学的ですね。」
「そんなもんだ。」



私が一息つくと、会長が、笑いかけてくれる。
「大体理解できたかな。少し休んだら、次の話ね。」
「そですね。」

なんせ今は、夜の十時半。ね、眠い。
明日が休みで良かった。
「今日は徹夜かもね。」
苦笑いでクロウズが言った。
その言葉に私は乾いた笑いを出した。


そのあと、サリアナと鷲見先輩と桜先輩の持ってきた紅茶を飲みながら、他愛も無い話を続けた。



「さて、怪物の話をしようか。」
「クロウズ、少しは包み隠そうとか思わないのか?」

えらく満面の笑みであるクロウズに羽在先輩が不満をぶつけた。

「放蕩書道家息子はちょっと黙ってて下さい。」
「お前・・・。」
明らかな怒りが含まれている。
クロウズって腹黒?いや、違うな。多分非常に外面がいいか、元々性格が悪いんだろうな。

「薫さん・・・?なんか失礼なこと考えてなかった?」
またも満面の笑みでおどろおどろしい声を聞いたから、適当にあしらう。
「別に?そんな事微塵も考えてないよ。根拠も無いのに、言いがかりつけないで。」

最後は会長が片付ける。
「薫さん。さっきも言ったけど、あの怪物は人間の感情の具現。妬み、悲しみ、恨み。いずれにしてもいい感情では決して無いんだ。」

「それはつまり、いい感情の具現は無いんですか?」
悲しそうな顔をしたから多分、答えは是。

「基本的に強い感情が具現化するから、悪い感情の具現が多いんだ。」

それが意味するところは、悪い感情の方が強いってこと。
そう考えると、人間って言うのは、心底汚い動物だと思ってしまう。

「だが、それを退治して扉向こうの世界に送り届ける者がいる。」
「それが、彩人学園、生徒会って訳ですね。」

郷榮先輩の言葉を受けて、私が察した事柄を告げると満足した風に笑った。
「でも、扉向こうの世界に送り届けるって人間の感情は向こう側の物なんですか。」
私が問えば、誰かが答える。
目の前に立ち並ぶ人は口を開いていない。聞こえた声は、生徒会の誰のものでもなく、ただ低く美しい男の声が代わりに響いた。

『似てはいるが違うな。人間の感情が強すぎて、扉向こうの世界に影響が出る。怪物自信は向こうのものだが、感情はこちらの人間のものだ。』

声がした方を振り向くと目にはいるのは、長い紫銀の髪。

私はその者の名を呼んだ。

「リクセフェロス・・・。貴方・・・何故ここに?」

問いかけるのではなく、驚きから来た無意識の言葉だったのだけど、リクセフェロスは優美に微笑んだ。
それは、女性であれば誰でも惚れてしまうような笑顔だった。

私って美形と美人に相当な縁があるみたいね。

当然と言えば当然だが、生徒会の人達は警戒心を強めた。
そんな中で、一度顔を会わせた羽在先輩は平然と見つめていた。
『常磐の瞳をした人の子よ。私は信頼に足るものであったか?』
「少なくとも俺はそう認めているつもりですよ。」

ポケットに入れていた手を出しておどけたように、手を広げる。

その答えを聞いてから、リクセフェロスは他の人に目を向ける。
『私は、審判の神 リクセフェロス。そこの凰炎 薫に呼び出された者だ。』

端整な顔立ちで、軽い流し目を受けたら、不覚にも膝から力が抜けた。すぐに戻ったけど。

「呼び出されたって召喚術?!」

会長が驚きの声をあげる。
何か特別な事なのだろうか。
そんな私の疑問を摘み取ったのか、副会長が口を開く。

「召喚術って私達の中でもちょっとやそっとじゃ、使えないの。なんせ膨大な精神と異常なまでの想像力が必要なんだからね。」

そこまで聞いて、ふと疑問がわいてくる。

それに気付いたんだと思う。
羽在先輩が優雅に笑んだ。
私、この人達のお陰で美形に耐性が付くわ。
「俺達はね、常人にはあり得ないほどの精神と想像力を持ってるんだ。」
「世界はやろうと思えば出来ることしか無いんだ。想像力と意志があればな。」

羽在先輩のあとに続いたのは平先輩。

「それは、何でも出来るってこと?扉の向こうの世界じゃなくても。」
頷いたのは郷榮先輩。
「ただ、それが出来るのも限られているがな。何か物を出すのであれば、等価交換に値するものは無理なんだ。」

「そんな難しい説明しても分かんないわよ。」
桜先輩がそう言った。確かに理解できない。
「つまりお金を払って手にする事の出来る物は出せないってこと。勿論お金自身もね。」
サリアナが郷榮先輩の話を噛み砕いて説明してくれる。

「代わりに、世界に"実際には存在しない物"は出せる。等価交換で成り立たない物も出せるし、一から十まで全て自分で考えた物もなんとかね。」
サリアナとクロウズの声はやっぱり似ている。双子ってそんなものかな。

「それは、存在しない現象でも同じこと?」
そうでなくては、今日私が使った魔法とやらの説明がつかない。
「ん、そうだよ。」
ひどく落ち着いた風にクロウズが答えてくれた。


「そして、僕たちが教えられるのもここまでだ。」
会長が言った。私も自然と顔を強張らさせる。
「これは全て、君の兄も知っていること。そしておそらく、君のご両親も。」
「お母さんとお父さんも・・・?」
「詳しいことは知らないけどね。君のご両親は昔、彩人学園の生徒会だったと言う記録がある。」
「この学校出身だったんだ。」
「薫さん。断るなら今のうちだよ。これから人間の汚さが分かると思う。君の友達も例外じゃない。知りたくないならやめた方がいい。
最初は何が何でも入ってもらうつもりだったけど、予定が狂ってね。」


会長は私の顔を覗きこんで、そういった。

溜め息を吐いて、肩に置かれた手を払う。

「兄や両親が知っているなら、心配要りませんね。会長もしつこいですよ。私は一度言ったことは曲げる気はありません。私のモットーに反するかもしれませんが、もう気にしません。それどころじゃないんでしょう。行方不明状態音信不通の兄の足取りが掴めるかも知れませんしね。」
「・・・・・・強いね。きみ。」

屈託のない会長の笑みはすごく可愛らしかった。

そのあとに続いた皆さんの言葉に私も笑った。

「「「「「これからよろしく。凰炎 薫さん。」」」」」

「はい!!」










選択は間違っていない。少女は手を差し伸べることとなる。黒く汚れた世界に。


ショウジョハアルキダシタ。ホロビヲスクイニカエルミチヲ・・・。

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