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神子色流れ






月翔国は学業の都と言われるだけあって、国妃も博識であった。


月翔国都、雪蘭にある
妃城、月楼。

国妃の凰蘭が、大層気に入ったと言うこと。夜は天守閣から月がよく見える。


「なんだか、違いがないわねぇ。そう思わない?雛綾。」


筆を指で弄び、さらさらと仕事を片付けていく凰蘭。
それを初めてから、三十分程で訳の分からない疑問を筆頭女官に投げ掛ける。

普通なら、一刀両断のはずが月翔国の筆頭女官、雛綾ならそんなもの何でもない。

訳の分からない疑問でも、至極真面目に問い返した。

「は…。何の違いでしょ?」

「下から来るこの書簡よ。似たような内容ばかり。つまらないったら。」
「国全体を震わす出来事なんてありませんからね〜。」


眠くなるような会話である。
なんとも平和な、なんともゆっくりとした、会話である。

世霊 雛綾。
月翔国妃付き筆頭女官。
二十七歳とは思えない、外見と声と性格。

凰蘭のマイペースも困ったものだが、彼女の方が困ったものだ。


そして、今この場にはいないが彼女達の会話に平然と着いてくる近衛騎士団長、雅染。
彼もつくづく不思議な男であると言えよう。
ちなみに今は、本日執り行われる月翔国での学会の警護に出ている。




「女王陛下。気分転換にお茶でも。」
「ありがとう。頂くわ。」

政務を放っぽり出し、雛綾が着々と準備をする円卓に備え付けられた椅子についた。


「あら、砂金水晶ね。」

凰蘭は円卓に並べられた皿や茶碗をみて言った。

「流石ですわ。女王陛下。砂金水晶の石言葉は幸運の鍵。ここのところ良いお話を聞きませんし。幸運を祈って。」

「良い見立てだわ。雛綾も。」

凰蘭は、茶碗に口を付ける。

月翔国では、皿や茶碗と言った日常品は宝石で作られていることが多々あった。

学会等の関係でよく輸入される宝石は、使わなくなった分を国妃である凰蘭や、民に配られている。
それを加工し、日常品に作り変えたのだ。

その加工技術は、月翔国の特産と言っても 過言ではないだろう。

そういう訳で、砂金水晶で作られた日常品を凰蘭も使っているのである。

石言葉も花言葉と同様にさまざまな意味を持つ。
花言葉と石言葉は、千和千鳥の女性の中で一般的な学問だ。

「金針水晶に幻影水晶。水晶が多いのね。」
「はい。なんでも学会で沢山余ってしまったそうで。国民の皆さんがせっかくなので、と送って下さいました。」

「そう。今のところ、国に大きな影響はないのね。良かったわ。」

広いバルコニーから城下を眺め、そう呟きを漏らした。

金針水晶で作られた皿の上には色とりどりのお菓子が並んでいて、凰蘭はその一つを手に取り、小さくかじった。

お菓子の甘さに目を細め、くすくすと笑いだす。
その笑みが何を意味するのかは分からないが、雛綾もつられて笑いだした。




砂金水晶の石言葉は幸運の鍵。
金針水晶の石言葉は直観。
幻影水晶の石言葉は悲しみを拭い去る。


花と同じように、石も手紙として使われていた事があった。
ただ、花のように安易に花言葉を並べるのではなく、いくつかの石を用いて本当の意味が伝えられる。

作成と解読の難易度は石手紙の方が高い。
その難易度故に、花手紙は日常生活の中で。石手紙は、暗号に使われることが多かった。




砂金水晶、金針水晶、幻影水晶等の水晶系が三つ使われた場合。

それの意味は、信者の裏切り、甚大な被害、大いなる災い。


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