01
「お姉ちゃん!今日お泊まりしない?」
『え?』
日も沈みはじめ、もう帰ろうかと話していたとき
タッカーさんと手を繋いだニーナがニコニコと笑いながらこう言ってきた
『え、でも…タッカーさん。貴方は忙しいんじゃ…?』
「やっと研究に一段落ついてね。ニーナも寂しかっただろうし、ニーナに好きなようにさせてあげたいんだ」
タッカーさんにそう言われてしまえば断れない
未だに難しい顔をするリタに兄弟からも声がかかる
「泊まりなよリタ。ニーナもその方が喜ぶんだし」
「タッカーさんだってああ言ってんだからいいじゃねぇか」
『…うん。そうだね!タッカーさん、よろしくお願いします』
やっと首を縦にふり、タッカーさんにお辞儀をしたリタをタッカーさんはニッコリと笑って返す
「それじゃあ明日ね、リタ」
『バイバイ!アル、エド』
ニーナと一緒に帰る兄弟に手を振れば、アルフォンスは振り返って手を振り返し、エドワードは歩きながら手をヒラヒラとさせた
兄弟でもここまで違う性格にリタ#は去っていく兄弟の後ろ姿を見ながら笑った
そんなリタの姿をタッカーさんは真剣な表情で見ている
これから起こる悲劇をものがたるように…
「ティペット少佐、少しいいですか?」
『…はい?』
グッスリと寝ているニーナの頭を撫でているとタッカーさんに声をかけられる
今までとは違い少佐として呼ばれたことに、真剣な表情で身構えた
タッカーさんは私に椅子に座るように言うと、紅茶を入れたカップを差し出した
私がソレを1口飲むと、じっとそれを見ていてタッカーさんが口を開き
「…貴女は私のことをどこまで知っていますか?」
『さあ、なんのことですか?』
「とぼけないでください、ティペット少佐」
タッカーさんの他人が聞けばなんのことだかわからない質問
その意味がわかった私はわざとおどけて答えたがタッカーさんの突き刺すような視線で消える
ごまかしは効かない。そんな表情のタッカーさんにため息をつき話し始める
『別に…私はなにも知らない。たぶんタッカーさんが“知っている”と思っているのは私の“憶測”でしかないもの』
「“憶測”ですか。貴女は私のことを最初からよく思ってなかったようでしたが?」
『それは気のせいです。しいて言うならあの兄弟に私のカンにさわる言い方をしたからですよ』
タッカーさんがエドワード達の過去を聞き、辛かったね。と言ったその言葉
辛かったなんて、そんなありきたりな言葉が大嫌いな私にとってその言葉は地雷そのものだったんだ
そう思いながら紅茶の入ったカップを飲みほす
タッカーさんはそんな私を見て静かに席を立つと、実験室に歩いていく
「ついてきてください」
有無を言わさぬ表情
その表情に私は席を立った
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