[携帯モード] [URL送信]
05

「へー。お母さんが2年前に…」

「うん。「実家に帰っちゃった」ってお父さんが言ってた」




引き続きタッカーさんの家で本を読んでいる兄弟とニーナの頭を撫でているリタ

リタは本を読めというエドワードの視線をことごとく無視してニーナの隣に座っている

その雰囲気は想像以上に穏やかなものだった




「そっか。こんな広い家にお父さんと2人じゃさみしいね」

「ううん、平気!お父さんやさしいしアレキサンダーもいるし!」


アルフォンスの言葉にアレキサンダーとじゃれながら答えたニーナ




「でも……お父さん最近研究室にとじこもってばかりでちょっとさみしいな」



だけどやっぱり小さな女の子

普通ならいっぱい遊んでもらっている年頃に、この現実はさみしいものだった

リタはそんなニーナの頭を撫でていた手を止める

自分も、小さいころから妹と2人きりだった

兄はずっと忙しそうにしていた…

実際、親の顔なんて思い出せないほどになっている




「お姉ちゃん?」

『…え?』



声に反応して周りを見ると心配そうにニーナてアルフォンスがリタの顔を覗き込んでいる

エドワードも本を読むフリをしてリタを横目で見ていた




「……あ――、毎日本読んでばっかで肩こったな」

「『…?』」

「肩こりの解消には適度な運動が効果的だよ、兄さん」




そんなしんみりとした雰囲気だった中、エドワードが本から顔を上げ、肩をならした

アルフォンスは兄の言いたい事を素早く理解して、エドワードの言葉に便乗する

ニーナとリタがなんのことだ、と呆然とするなか、兄弟の話は進む




「そーだなー。庭で運動してくっか

オラ犬!!運動がてら遊んでやる!」

「さ、ニーナも。もちろんリタもね?」




ああ、そういうことか。

にぱっと笑顔になってアルフォンスと一緒に歩いていくニーナの後ろ姿を見ながら苦笑いをする




『…不器用なんだから』




それでもそんな2人を微笑ましく思う




「お姉ちゃん早くー!!」

『今行くね!』




ニーナに呼ばれて進めた足はとても軽かった






「おい、リタ」




休憩で木の影に座っていたらアレキサンダーから逃げてきたエドワードがいつの間にか隣にいる




『どうしたの?』



笑顔で尋ねるとエドワードは言いにくそうに目線を反らし、ポツリと呟いた




「あんま…1人で抱え込むなよ」

『…え?』




さっきのニーナの話を聞いていた時のことだろうか

聞きかえしたら




「な、なんでもねーよバカヤロ――!!」




と走って言ってしまった




『……』




ポカーンとその場に立ち尽くすリタの目にアレキサンダーに潰されたエドワードが映ったのは、しばらく後だった







_
END

[*前へ]

5/5ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!