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04

「『……』」




お互い沈黙が続く

アルフォンスとはニーナの流れで打ち解けられたリタだがエドワードと2人で話したことはない

それに何より




『(男、苦手なんだよね…)』




正確に言えば金髪の男が苦手

トレインジャックのとき、エドワードの手をとらなかったこと、

列車から落ちるときとっさに庇ってくれたのに身体を強ばらせていたのもそんな理由だった




「…なあ」




沈黙を破ったのはエドワード

肩をビクつかせたリタに気付かないフリをして話を進める




「短刀直入に聞く。…オレのこと嫌いか?」

『!』




エドワードの言葉に驚いてうつ向いていた顔をあげる

目に入ったのは悲しそうな表情のエドワード

違う。そんな表情をしてほしいんじゃない




『ち、違う…。ただ、男の人…少し苦手で、

昔ちょっとしたトラウマがあって…それ以来金髪の男の人が…苦手?』




しどろもどろで、最後は何故か疑問系で話したリタ

慣れれば平気だから!と付け足したリタに未だに不満そうなエドワード



『でも……――ッッ』

「ッ!?おい!大丈夫か!?」



何かをいいかけた途端、口を押さえて座りこんだリタ

そして激しく咳き込んだリタの背中に手をのばしさすってやる

しかしさっきのリタの言葉を思い出して手を引っ込める




「ご、ごめん!」

『…―――』




そう言って去ろうとしたエドワードの赤いコートの裾を少し引っ張ったリタ

そして力無く首を横にふると小さな声でこう言った




“傍に居て”









その言葉にエドワードは少し恥ずかしそうに頬をかくと左手でリタの背中を撫でた




「(ほっせぇ身体…)」




リタの背中は細く小さな背中だった









『ありがと…もう大丈夫だよ』




呼吸が落ち着いてきたところでエドワードにお礼を言う

そしたらエドワードはそうか。と安堵した表情で言ってくれた

そんなエドワードの横顔を見ていて思う

私は彼の事をなにもわからずにいた




『(…優しくない人の手が、あんなにあったかいはずがないじゃない)』




自分の背中にあった手は優しかった

時折、顔を覗く金色の目は優しい色をしていた

小さいし、目付きは悪いし、口は悪い

だけど、だけど―――




『ありがと、エド』



もう、エドワードに対するトラウマの恐怖心なんて消えていた

そして初めてエドワードに、心からの笑顔で笑いかけた




「―――ッッ!おっおう!!!」




私の言葉に慌てて立ち上がってソッポを向いたエドワード

その耳は心なしか赤く見えた

……照れてる?




『可愛いー』

「うっせ」




ふて腐れた言い方も今は可愛く思える

クスクス笑ってるとエドワードがクルッとコチラを向いて左手を差し出してきた




『……?』

「行くぞ、リタ!」




あ、名前――――……


初めて名前を呼ばれたことに驚いてエドワードを見上げると、太陽のような笑みで返された

その笑顔にときめいてしまって慌てて顔を反らす




「…照れてる?」

『うるさい』




差し出された手をとり立ち上がると2人で笑いあう

やっと、エドワードとの距離が近づいた







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あきゅろす。
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