交わらない、それでも(フレン夢)
ヒロインがラゴウとキュモールを殺してた設定。
×フレン編
いつからだろう。その剣があたしに向いたのは。
いつからだろう。こんなにも、君との距離が離れたのは。
「どんな事情があったとしても、僕は君の罪…2人を殺した事を見過ごすわけにはいかない」
フレンのその言葉を聞いたユナリアは薄く笑った。
「キュモールのはともかく、ラゴウのまでばれてたんだ」
ユナリアはフレンに背を向けると、湖に足を踏み入れた。
昼間は心地よいと感じる水も、夜になると寒いほど冷たい。
「水って…汚れも残らず落としてくれる。あたしの罪も…落としてくれればいいのにな……」
ユナリアは水を足で蹴りあげながら言った。上がったしぶきが月の光を受けてきらきらと輝く。
そして彼女はゆっくりとフレンの方を向くと、両手を広げた。
「フレン。……あたしを、殺して」
一瞬、フレンが剣を持つ手に力が入った。
ユナリアは、つらそうに笑いながら言う。
「ユナリア…君は」
「怖いの。これ以上、誰かを傷付けたくないよ」
ユナリアの瞳が恐怖と悲しみに染まっている。でも不思議と、後悔はなくて。
「今がチャンスかな。首を絞めて殺しても、きっとばれない。その剣で、ばっさりとやっちゃってもいい」
「っ…!」
「もう、疲れたよ。騎士団なんて、評議会なんて、ちっとも変わりゃしない。もう嫌なんだよ?虐げられてる人達見るのは」
ユナリアは諦めの籠もった声で言った。
彼女の言うとおり、騎士団も評議会も、何一つ変わらない。フレンも努力しているが、何一つ。
「さ、殺して。じゃなきゃあたし、きっと、もっと罪を重ねちゃう。いつか、エステルやフレンも…」
この少女は、変わることのない世界に絶望し、変わらず虐げられる人々を前に涙した。何度も、何度も。
またそれを見てしまったらきっと、彼女は行動を起こすだろう。
その前に止めてやらなければ。
でも。
君のことを好きな僕はどうすればいい?
どれくらいの間、沈黙が続いただろうか。
フレンの持つ剣は砂の中に投げ捨てられ、彼の腕の中にはユナリアがいる。
「……フレン」
先に沈黙を破ったのはユナリアで。
「やめて…」
それは、拒絶の言葉だった。
「ユナリア、僕は…!」
「あたしもフレンの事好きだよ?でも、あたし達は。追う者と追われる者−裁く者と裁かれる者でしかない」
フレンは何も言い返せなかった。
その通りだからだ。フレンが騎士である以上、2人の愛がどれほど大きくても、そういう関係でしかない。
それでも。
「僕がこの世界を変えるから。だからユナリア。生きて、どうかそれを見ていてくれ」
「フレン…」
フレンはユナリアを強く抱き締めた。ユナリアもそれに応えるように、彼の背中に腕を回した。
実際、離れようと思えば離れられた。でもそうしなかったのは、ユナリア自身、彼を求めていたからだろう。
「…分かったよ。フレンが言うから、あたしもう少し生きてられる」
そう言うユナリアは、月の光のせいかいつも以上に魅力的で、柔らかな弧を描く唇は月そのものの様。
「ユナリア…変わったね」
「そう?フレンがへたれになったんでしょ」
2人で顔を見合わせて笑う。その時だった。
突然、大きな音と共に、光の花が空に浮かび上がった。
花火だった。
「綺麗……!」
ユナリアはそれを見て、うれしそうに声をあげた。ああ、いつものユナリアだ、とフレンは優しく笑った。
「ユナリア」
「ん?…っ」
名前を呼ばれ、振り向いたユナリアにフレンはキスを落とす。触れるか触れないかのキスだ。
不意にキスされるのは嫌だろうというフレンの心遣いからか、すぐにそれは離された。
だが、フレンは女心というものを全く分かっていない。
「ユナリア………っ」
ユナリアは貪るように、何度も何度も、角度を変えながらキスをする。互いの息が荒くなり、ようやく離れた唇からは熱い息が漏れた。
「は……フレンっ…気ぃ遣い過ぎ…女の子はっ……好きな人からのキスは…不意でもすっごく…嬉しいんだよ…」
頬を赤らめて言うユナリアを強く抱き締めたフレンは、それはごめん、と耳元で優しく囁いた。
2人の間に、心の距離などなかった。
でも明日からはもう、追う者と追われる者。決して交わることはない。
それでも、
好きだから。
「あー、あれだよね。一時休戦ってやつ」
「…やっぱりユナリアは変わらないな」
「でしょ?」
シリアスにするつもりが、なんか甘く…笑
なんか表現とか下手でごめんなさい。
最近、ユーリもいいけどフレンも☆って感じになってます。小説書きながらドキドキしてます。
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