再び演劇(オールキャラ)2 そして本番に。 夢あんまり出ません。3でたくさん出しますっ☆ 「あるところに、勇者とお姫さまがいました。2人は誰もが羨む程の仲で、2人の間には笑顔が絶えませんでした」 ジュディスのナレーションから劇は始まった。 (ユ、ユーリ) (なんだよ) (苦しい……) (仕方ねえだろ?演技なんだから) (……) ユーリはユナリアを抱き締めながら小声で言った。 「しかしそんな日々は長く続きませんでした」 ジュディスの声を合図に、ユーリたちの頭上には闇の塊。リタだろう。 「姫を渡してもらおう。さもなければ、お前の命の保障はない」 魔女リタはユーリたちの後ろから登場し、堂々と言った。やはり魔女役はリタ以外考えられない。 そして、魔王レイヴンはユーリたちの前から登場した。 「さあ、姫を渡せ」 レイヴンはシュヴァーンの時の様に髪を降ろしており、声のトーンも普段の彼と比べものにならない程だった。 (あのおっさん、結構本気だな) (いいじゃんおっさん) 「渡さない、か」 リタはそう言うと闇の塊をユーリすれすれに落とした。 「うわっ!」 (てめっ、今本気でやっただろ!あぶねーっ) (し、仕方ないでしょ?加減間違えたのよ) ユーリは台本通りこけて見せると、小声でリタに訴えた。リタには何となく殺気がこもっていた気がしたからだ。今、リタの攻撃に殺気がこもる原因は1つしかない。 ユナリアだ。きっとユーリがユナリアを抱き締めているのが気に入らないのだろう。 「きゃぁああ!」 「姫は確かに貰い受けた。魔女よ、行くぞ」 「ええ」 2人はユナリアを連れて退場した。 「くそっ…姫…あなたはわたしが必ず助ける。待っていろ、姫」 (ユーリ、棒読みになってるよー!) (もういい!次だ次) 一度幕が閉じ、少し間があいた時だった。 「おっさん、どこ触ってたの!スプラァーッシュ!」 「やめてユナリアちゃんーっ!」 「ユナリア!水浸しになるって!」 舞台裏から聞こえてくる声に、観客は疑問符を浮かべていた。 これにはジュディスも溜息をつくしかなかった。 幕が開いた。 「さあ、ついに魔王の城まで辿り着いた勇者」 「くっ…長い道のりだったぜ…」 「勇者め、か、覚悟!」 「これ以上は行かせません!」 「勇者の前に立ちはだかる敵。勇者、絶対絶命か?」 「へっ、来いよ」 「や、やぁあああ!」 雑魚カロルが大剣を振り回しながら向かってくる。 ユーリはつい手加減することを忘れ、彼の大剣目がけて渾身の力をぶつけた。 凄まじい金属音の後、カロルの大剣は真っ二つになった。 「や、やべ」 カロルの持っていた大剣は、おそらくギルドの方で用意されていたものだろう。 (ユーリ…まずいって!) (…とりあえず、こけとけ) 「う、うわぁあ!」 「カロル!よくもカロルを!やぁっ!」 「っと…」 ユーリは慌ててエステルの攻撃を受け流すと、今度は慎重に戦い始めた。 (本気を出さないんです?) (本気出したらさっきみたいになるだろ) (それもそうですね) 「これでどうです!」 「効かねえなっと」 ユーリとエステルは慎重に剣を交える。 「これでどうだ!」 「っ!?」 ユーリは剣を持つ手に一瞬力を入れると、エステルの剣を弾き飛ばした。 その時だった。 「あ」 エステルの剣は舞台の床に刺さってしまった。これは、ユーリの力加減の問題だ。 (…ユーリ!) (…悪ぃ) 「くっ…覚えておけ、です!」 「魔王様が黙っちゃいないぞ!」 2人は捨て台詞を吐いて退場した。 (…どうしようエステルー) (どうもこうもないです!ユーリは…) 「…はぁ。よし、これで城に入れるな」 ユーリはもう台本を無視し、アドリブで劇を進めていった。 「…ついに魔王の城の中に入っていく勇者。さて、これから一体どうなってしまうのか……」 幕は閉じ、今度は10分程の休憩に入った。 「で、どうすんのよユーリ」 「どうすんのって、なっちまったもんは仕方ねえだろ」 「もう、極力物は壊さないで下さい」 「分かったよ」 「リタも、ですよ!」 「あたしまだ何もやってないじゃない!」 「今からリタが活躍しますから」 「分かってるわ。加減はする」 「…罠は…無いな」 後半は、ユーリの勝手な台詞から始まった。 (ち、ちょっと!今から罠発動させるのよ!) (って、魔法かよ) (食らえ!) 舞台の左側から放たれる火球。 「おっと」 (んな!なんで避けるの!剣で受け止めなさいよっ) (もう避けちまったよ…。!?) リタの放った火球は軌道がずれ、幕に直撃した。幕は炎に包まれる。 (っ…!…スプラッシュ!) リタは慌てて魔術で火を消すと、ほっと胸を撫で下ろした。 (リタ!何してるんです!) (…もういい。もういいわ) (何がもういいんです!?) (ヴァイオレントペイン!) (リタ!) リタは何かが吹っ切れたらしく、エステルの制止を無視し魔法を発動した。 「うわっ!?」 ユーリは足元に広がった闇から慌てて飛び退くと、リタを睨み付けた。 (おいリタ、てめぇオレを殺す気か) (そうかもね。…行くわよ) 「…たいしたものね」 「へっ。やっぱりてめぇの仕業かよ」 「ここは通さないわ」 「力ずく、て事か」 「行くわ!」 2人とも台本は完全に無視だった。アドリブのはずだが、お互いかなり本気だ。 「デモンズランス!」 「へっ、効くかよ」 闇の槍はユーリには当たらなかったが、舞台の床を派手に壊し消えた。 「アクアレイザー!」 「っ!?」 床に現れた水はユーリの体を容赦なく吹き飛ばした。だが彼も受け身をとると、リタ目がけて衝撃破を放った。 「攻撃のつもり?」 「ふっ…終わりだっ!」 「!?」 ユーリはリタが攻撃を受け止めた隙に間合いを詰め、彼女を斬るふりをした。 「くっ…」 (ほら、早く倒れろよ) (うっさいわねー…) 「魔王、様……」 「魔女は勇者との激しい闘いの末ついに倒れてしまいました。残るは魔王だけです。勇者は、姫を助けることが出来るのでしょうか…!」 「魔王さん、待ってろよ?」 3に続く [*前][次#] [戻る] |