刀剣男士と私の本丸事情
大倶利伽羅は見た!
……。
…………。
『よし!』
誰もいなくなったのを確認して、いざ!
長谷部のカソックを抱き締める。
『変態っぽい』
自分にぼやきつつ、顔をうずめる。
長谷部の匂いがした。
『〜♪』
今度は立ち上がって羽織ってみる。
『やっぱり身長高いなあ』
カソックの裾は地面についたままだ。
くるくる回ってみてもひらひらしない。
「……」
『……あ』
ジャージ姿の大倶利伽羅と目が合った。
光忠と一緒に畑仕事行ってもらってたの忘れてたっ!
『えっと、畑仕事お疲れ様』
「……見てない、ことにしといてやる」
優しい言葉をいただいた。
『倶利ちゃん、ありがとう!』
「だからその呼び方はやめろ」
『倶利ちゃんマジ天使!』
「……光忠に言ってくる」
『うわぁぁあ、待って待って恥ずかしすぎるから!』
とっとっとっと足音が聞こえた。
「主?」
長谷部が戻って来た様だ。
『って早い!ああ待って倶利ちゃん、お願い言わないで倶利ちゃんっっ……』
大倶利伽羅は行ってしまった。
「何をしているんですか貴女は」
長谷部からも呆れた視線をもらう。
『ちょっとつい出来心で』
私の背中はカソックのまま。
「状況はなんとなく分かります」
大倶利伽羅の去って行った方向を見て呟く。
『うう、もう返す』
背中から剥ぎ取って、長谷部に突き返した。
「俺は嬉しいですけどね」
『……ありがと』
慰めの言葉が染みた。
「可愛いかったです」
カソックを羽織る長谷部。
『長谷部ぇえ』
うわーんと抱き付いて、受け止めてもらった。
「仕方のない人だ」
よしよしと頭を撫でられて、子供扱いされている気がしないでもない。
『倶利ちゃんが、光忠に言うって』
「いいんじゃないですか、貴女が俺を好きだということが広まって」
冗談で言っている風ではない長谷部。
『良くない、恥ずかしい』
恥ずかしいことをしていた自分が悪いのだけれど。
「きっと大丈夫ですよ」
背中をぽんぽんと叩かれて落ち着いてきた。
「あいつはああ見えて、思いやりのあるやつですから」
長谷部がそんな風に他の刀剣男士のことを語るのは初めてだった。
『倶利ちゃんのこと、信頼してるんだね』
「いいえ、あいつの性格を理解しているだけですよ俺は」
とか言ってくれてたけど。
数時間後の昼食時。
親子丼を振る舞ってくれた光忠に言われた。
「君、長谷部くんのカソック着てはしゃいでたんだって?君達ってバカップル丸出しだよね、幸せそうで何よりだよ」
微笑ましそうに。
お母さんかっ!
『倶利ちゃーんっ!うわぁーん』
「ふん」
大倶利伽羅の視線が変な呼び方をするなと語っていた。
『美味しい……うぅ、お肉がぷりっぷり……』
「文句の付け所がないな。主、ついてますよ」
長谷部に口元をハンカチで拭われる。
「まだあるからどんどん食べてね」
気落ちしていても、皆で食べる親子丼は美味しかった。
……バカップル称号いただきました。
<終>
⇒あとがき
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!