刀剣男士と私の本丸事情
光忠は料理が得意
長谷部の頭の向こうに、黒いジャージを認める。
『あ、光忠だ』
長谷部に抱きついたまま、私は光忠に手を振った。
「やあ君達……それは何の遊びかな」
『長谷部を愛でてるの、いいでしょ』
自慢気に話すと呆れた視線で返される。
「それは羨ましい限りだね。それより、今日は卵がたくさんとれたから親子丼にでもしようかと思ってるんだけど」
ちらっと長谷部を見る光忠。
「鶏、さばいて来てくれないかい?長谷部くん」
「なんで俺が」
『やった!美味しいよね親子丼』
きらきらした視線を送ると、長谷部は折れてくれた。
「分かった。主のためだ、主命でなくとも引き受けよう。まったく、こんな予定ではなかったんだかな」
「いやあ、助かるよ。となると三つ葉も必要だね」
どこに植えたかな、と言いながら光忠は立ち去ろうとする。
『あ、待って光忠』
居ずまいを正して光忠に向き直った。
「ん?何かな」
『近々宴会を開こうと思ってるんだけど、そこに出す料理を光忠に手伝ってほしくて』
光忠は嫌な顔ひとつせず、笑顔を返してくれる。
「料理か、オーケー。長谷部くんも手伝ってくれるんだよね?」
「無論だ」
「うんうん、愛を感じるね。詳細が決まったらまた教えてくれるかな、その時の旬の食材を使わないとね」
じゃあねと言いながら去って行く。
「はあ、行ったか」
長谷部はすくっと立ち上がり、カソックを脱ぐ。
「これを預かっていてくれますか」
差し出されたカソックを受け取る。
『はい、預かりますよー』
「では、行ってまいります。新鮮なお肉をお持ちしますね」
お持ち……?
『えっと、こっちには持って来ないでね、怖いから!』
「はい、板の間に届けましょう」
そりゃそうか。
『長谷部長谷部』
ちょいちょいとまた手招きして呼び寄せる。
「はい?」
『行ってらっしゃい』
ちゅっとキスをしてやった。
私もさっきのお返しだ。
『貴女は本当に愛らしい』
うっすらと頬を染める長谷部。
「審神者様、行ってまいります」
きゅっと襟元をただすと顔つきが変わる。
出陣するかの様な気迫の長谷部を見送った。
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