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刀剣男士と私の本丸事情
格好いいカソック



『でも実のところ、こっちのカソックが好きなんだ』

上着の裾を掴んで引っ張ると、さすがに動き辛くなったのか動きが止まった。

『長い裾って格好いいよね!』

光忠みたいな決め台詞を、長谷部に言う私がいた。

「光忠にでも感化されたんですか、駄目ですよ主。あの男は存在が卑猥だ」

『それは言い過ぎじゃあ……』

色気が漂っているのは否定しないけど。

『……長谷部もわりと卑猥かも』

「俺がですか」

ひらみとかひらみとかひらみとか。

『ストラとカソックが』

「それは、複雑ですね」

じりじりと長谷部は詰め寄ってくる。

「俺自身はどうですか」

耽美派な長谷部はもちろん色気がある。

『長谷部も卑猥だとか……言われたいの?思ってないけど』

それはそれで複雑だろうし。

「俺自身に魅力はありませんか」

『とっても魅力的だから!』

長谷部の手が、私の唇に触れる。

「そうですか」

手袋に滲んだ紅と、ほの暗い長谷部の表情が妖艶に見えた。

『なに、してるの』

「紅を落としています」

ごしごしと擦る感触に、少し痛みを感じる。

『何で……似合ってなかった?』

薬研は似合うって言ったのに。

「この紅色がね、俺に嫉妬させるんですよ」

『え』

「貴女に似合いのものを、なんて。それは俺の……恋人の役目でしょう?」

熱のこもった視線で見つめられる。

「ねえ審神者様」

長谷部の口から掠れた声が漏れた。

「恋人らしいこと、しませんか」

耳許で囁かれて、体温が上がる。

『っ!!!』

私は思わず、目の前にあったストラを引っ掴んでしまった。

「っ?!」

甲冑ごとストラがずれて、背中の蝶結びが長谷部の後首に食い込んだ。

「ぐ」

苦し気に呻く長谷部に慌てて手を離す。

『わあーっ、ごめん長谷部!』

「大丈夫ですから。はあ、これは邪魔ですね」

そう言って甲冑を取り払う。

足元に置かれたそれは重たそうだった。

『肩、こってない?』

「平気ですよこのくらい」

ちょいちょいと手招きして、少ししゃがんでもらう。

『うわ、がっちがち』

思った通りこり固まっていた。

『ちょっとそこに座ってくれる?』

縁側を指差して言う。

「はい」

素直に腰掛けた長谷部の後ろへ回り、膝をついて肩を揉みほぐす。

『お客様ー、お加減はいかがですかあ?』

「ふふ、はい。とってもお上手ですよ」

長谷部はいつも頑張ってくれている。

ううん、長谷部だけじゃない。
本丸の刀剣男士たちは皆、だ。




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あきゅろす。
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