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刀剣男士と私の本丸事情
ストラと薬研のお土産



ひらひら、ひらひら。

目の前で長谷部の服が揺れる。

『ひらみだ、ひらみ』

猫じゃらしを前にした猫のようだと思いながら、ストラを目で追う。

「よお大将。ん?何してんだ」

薬研がひょっこりと顔を出した。

『ニキだ』

「その呼び方はやめてくれ」

『はぁい』

今私は縁側から、長谷部の様子を伺っている。

『あれ、どう思う?』

「ん?長谷部が素振りしているな」

ふんっ、ふんっと刀を振っている。

「良い心掛けじゃねえか、真面目すぎるとも言うが」

『まあそうなんだけど』

それより気になるのはあのひらみ。

「なるほどな、大将はあれにうずうずしてるわけか」

『うん、そう』

振る度にひらっと舞い上がる。
なんて芸術。

『引っ張りたいな』

「長谷部なら、頼めばやらせてくれるだろ?」

……ヤらせて……?

『ごほごほっ』

「どうした大将、急にむせて。何だか顔も赤いぜ?大丈夫か」

『大丈夫、鼻血出そうなだけ』

「それ、大丈夫じゃないよな」

何やらごそごそしだした薬研は、ポケットから何かを取り出す。

「そうだ大将、渡し忘れていたんだが遠征の土産だ」

差し出されたそれは貝殻だった。
金色のハマグリは、きらきらと光を反射して輝いている。

『わあ綺麗、それ京紅?』

貝には美しい装飾が施されていた。

「ああ。京紅の材料は紅花でな、婦人病に効くんだぜ?」

鼻血は婦人病じゃないけど。

「言わなくていい、何が言いたいのかは分かってるつもりだ」

鼻血で思い出したんだと言い張る。

「ちゃんと紅筆も買ってきたぜ。使い方わかるか?」

『んー、微妙?』

いつ持って来たのか、湯飲みには水が入っていた。

「まずは紅筆を水で濡らしてだな」

筆を塗らして紅を溶かす。

「ちょっと顔、上げてくれ」

『ん』

唇をすーっと筆がなぞる。

「できたぜ。似合いそうだと思ってはいたが、よく似合ってる」

誉められて悪い気はしなかった。

『ありがとう、大事に使うね』




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