散桜花録 肆 『てめえらいい加減にしやがれっ!!』 「・・・・・・」 『ったく。千鶴は隊士としてここに置けないだろ』 「彼女の処遇は少し考えなければなりませんね」 「なら、誰かの小姓にすればいいだろ?」 『そーだな。近藤さんとか山南さんとか』 またもや面倒な表情をする土方に。 「やだなあ、土方さんに柚斗は。そいいうときは言い出しっぺが責任取らなくちゃ」 「『はあっ!?』」 「ああ、二人のどちらかの傍なら安心だ」 「そういうことで土方君と霞崎君。彼女のこと、よろしくお願いしますね」 近藤と山南は笑顔で二人を見る。 「・・・・・・てめぇら・・・・・・。俺は柚斗がいるから何もすることはない」 『・・・・・・俺も、特に何もしてもらいたいことはない』 どうにかそれから逃げようと二人は足掻く。 「柚斗。おまえに千鶴を任せる。どうせ女同士だろうが」 『逃げたな。歳兄ぃ』 柚斗は恨めしそうに土方を見て、ため息をつくと。 『わかった。千鶴は俺が預かる』 そこにいた全員は驚いた。まさか、柚斗がそんなことを言うとは思っていなかったからだ。 「・・・・・・・・・・・・」 『さてと。これでお開きのようだから俺は部屋に戻るぞ。千鶴、ついてこい』 「はいっ」 部屋を出た二人を広間にいた全員は見送る。 (・・・・・・あいつ(あの子)の背はあんなにも低かったんだな(ですね)) 千鶴と同じ背だとわかると、そうしみじみと感じるのであった。 一方、柚斗は千鶴を連れて、自分の部屋に入る。 「ここ、義姉さんの部屋だったの?」 『まあね。さすがに何もなかったからな・・・・・・まあ、そっちの方がいいんだろうけど』 「じゃあ、隣は・・・・・・」 『ご察しの通り。副長の歳兄ぃ』 「・・・・・・義姉さんは、土方さんの事、歳兄ぃって呼ぶんだね」 『まあな。事実上土方家の養子だったし。名字が土方じゃないのはそこまでしなくていいって義姉<あね>が言ったから』 「・・・・・・事実上の養子?」 『土方家に来た時、俺は名前以外記憶を失ってしまってたしな。最近はどうでもよくなったけど。・・・・・・千鶴? なに泣いてんだ?』 「・・・・・・あれ?」 知らず知らずに流れていたのだろう。千鶴はすぐに涙を拭う。 「そ、それで、沖田さんは?」 『兄弟弟子だから。俺は我流を使ってるけど、一応は天然理心流の門下生だ。・・・・・・我流を教えたのは歳兄ぃだけどな』 「へえー」 『さて、次は千鶴をどこに居させるかの問題かな』 「えっ?」 急に話題を変えた柚斗に千鶴は驚いた表情をする。 『話し合ってくるの忘れてた。・・・・・・まあ、決まるまでこの部屋、自由に使っていいからな』 「あ、う、うん」 頷いた千鶴に柚斗は笑顔になる。 『本当に可愛いな。千鶴は』 [*前へ][次へ#] [戻る] |