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散桜花録

『てめえらいい加減にしやがれっ!!』

「・・・・・・」

『ったく。千鶴は隊士としてここに置けないだろ』

「彼女の処遇は少し考えなければなりませんね」

「なら、誰かの小姓にすればいいだろ?」

『そーだな。近藤さんとか山南さんとか』

またもや面倒な表情をする土方に。

「やだなあ、土方さんに柚斗は。そいいうときは言い出しっぺが責任取らなくちゃ」

「『はあっ!?』」

「ああ、二人のどちらかの傍なら安心だ」

「そういうことで土方君と霞崎君。彼女のこと、よろしくお願いしますね」

近藤と山南は笑顔で二人を見る。

「・・・・・・てめぇら・・・・・・。俺は柚斗がいるから何もすることはない」

『・・・・・・俺も、特に何もしてもらいたいことはない』

どうにかそれから逃げようと二人は足掻く。

「柚斗。おまえに千鶴を任せる。どうせ女同士だろうが」

『逃げたな。歳兄ぃ』

柚斗は恨めしそうに土方を見て、ため息をつくと。

『わかった。千鶴は俺が預かる』

そこにいた全員は驚いた。まさか、柚斗がそんなことを言うとは思っていなかったからだ。

「・・・・・・・・・・・・」

『さてと。これでお開きのようだから俺は部屋に戻るぞ。千鶴、ついてこい』

「はいっ」

部屋を出た二人を広間にいた全員は見送る。

(・・・・・・あいつ(あの子)の背はあんなにも低かったんだな(ですね))

千鶴と同じ背だとわかると、そうしみじみと感じるのであった。

一方、柚斗は千鶴を連れて、自分の部屋に入る。

「ここ、義姉さんの部屋だったの?」

『まあね。さすがに何もなかったからな・・・・・・まあ、そっちの方がいいんだろうけど』
「じゃあ、隣は・・・・・・」

『ご察しの通り。副長の歳兄ぃ』

「・・・・・・義姉さんは、土方さんの事、歳兄ぃって呼ぶんだね」

『まあな。事実上土方家の養子だったし。名字が土方じゃないのはそこまでしなくていいって義姉<あね>が言ったから』

「・・・・・・事実上の養子?」

『土方家に来た時、俺は名前以外記憶を失ってしまってたしな。最近はどうでもよくなったけど。・・・・・・千鶴? なに泣いてんだ?』

「・・・・・・あれ?」

知らず知らずに流れていたのだろう。千鶴はすぐに涙を拭う。

「そ、それで、沖田さんは?」

『兄弟弟子だから。俺は我流を使ってるけど、一応は天然理心流の門下生だ。・・・・・・我流を教えたのは歳兄ぃだけどな』

「へえー」

『さて、次は千鶴をどこに居させるかの問題かな』

「えっ?」

急に話題を変えた柚斗に千鶴は驚いた表情をする。

『話し合ってくるの忘れてた。・・・・・・まあ、決まるまでこの部屋、自由に使っていいからな』

「あ、う、うん」

頷いた千鶴に柚斗は笑顔になる。

『本当に可愛いな。千鶴は』

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