饂飩が好きな君へ最後の
※バカ。
2人で立ち食いうどん食べてる時に、江頭が思い出したみたいに言った。
「そーやそーや、今日女子に告られてん」
「へーよかったやん、相手は?」
「隣のクラスの新保ちゃん」
「へぇ、めっちゃかわいい子やんけ」
「おう。高校生になって男としての格が上がったみたいや俺」
「相変わらずめでたい奴やな」
ズズズと、うどんの麺をすする音が会話を遮る。暑い。店内は髪の薄いサラリーマンと俺と江頭しか客がいない。当たり前や。なんでこの暑いクソ暑い中でうどん食わなあかんのや。
それでも熱々のかけうどん2人分頼む江頭に、店のおっちゃんは「こいつ大丈夫なんかな」て顔しながら、熱々のかけうどん作ってくれた。ちゅうか考えたらお前1人だけぬくいのん食うたらええやん。
暑い。江頭のせいや。主食がうどんで副食がうどんのうどん魔神江頭のせいや
「俺さ、舞い上がってしもて」
「まぁ男やからしゃあないな」
「OKしちゃった」
「まぁ男やからしゃあいな」
またズズズとうどんを啜る。あっついはほんまくらくらして…
「?」
ふと思って割り箸を置く。え、コイツ今何ゆうた?
「食べへんの?じゃあ堀田のんも食べたるわ」
江頭の頭をばしんとはたく。江頭は冗談やんけとはたかれたとこを手で覆う。
「え、お前OKしたん?」
「したった!」
「なんやそのドヤ顔!しばくぞわれ!!!」
泣きそうになりながら江頭を責める俺を、薄毛のサラリーマンがちらちらと見る。鬱陶しいのうハゲこら、残り少ない貴重な毛むしったろかこら
「落ち着け堀田、元気だせ!元気元気!」
「落ち着いてる場合か、元気出してる場合か!なんやねんほんまに!」
俺ら付き合ってたんちゃうんか!
と言いそうになりながらも公共の場所でそんなことを言う程我を忘れてない俺は、うどん代の420円を台に置いて、「かえる」と言い捨てて席を立つ。瞬間江頭が慌てた顔したから、弁解でもするんかと思ったら
「おい!うどん食えへんのか!?」
やって。ふざけんなよ。俺は最後の捨て台詞に「うどん喉に詰まらせてしにさらせ!」と言ってうどん屋を後にした。
****
「なぁ堀田〜許して〜や〜」
「嫌や。語尾伸ばすなきしょい」
「堀田ぁ許してぇやぁ」
「(〜)無くしてもおんなじや!」
翌日、江頭は俺の机に来ると平謝りしてきた。昨日俺はずっと考えててんぞ、俺たちの関係について一睡もせんと。目の下のクマにお前は触れもせえへん、てか江頭目悪いから気付けへん。それでも江頭が「ちゃんと新保に断った」とか言うまで絶対許したらへん。絶対や!
「堀田、ジャ●プの最新刊読みたくない?」
「えっ!みたいみたい!」
「………」
「だ、誰が行くかアホ、立ち読みじゃアホ」
江頭がニヤニヤする。こいつむかつくわ。絶対許したらへんぞ!
「江頭くーん!ここにおったんやあっ」
笑顔で走ってきた新保ちゃんが、堀田の腕に抱き付く。おいわざとおっぱい押し付けてるやろ。何なんこの子、朝から天ぷら食べてきたみたいに唇テッカテカや。
「いつ部活休み?里奈一緒帰りたいよぉ」
「それがしばらく休みないみたいやねんなぁ〜それにこいつ(俺)といつも帰ってるし〜」
「堀田くんも一緒に帰ってもいいよぉ」
新保うぜえ。お前に許可求めてへんぞ。堀田も顔ゆるみっぱなしや。なんやお前ら天ぷらとうどんのコンビか。定食屋の人気者になるつもりか。そーかそーか
「ごめんちょっと今日先帰っといてもらってええか」
ざまぁ天ぷら女!
「堀田…」
俺かい。
そうかもうええわもうわかったよお前の気持ちは。ただ一言言わせてくれ
「お前うどん食うてる時ハフハフ言い過ぎ。きしょい」
俺は走った。
もうええ、結局好きやったんは俺だけか。確かに告ったのは俺で、最初はあいつも驚いてた。けどこいつなら何でもあげる、どこまで墜ちてもいいとまで思った俺がアホやったんや。あいつが女子と親しげにしてても告られても俺は怒らなかった。それは、うざいとか思われたくないとかじゃなくて
自分なりの、控えめで相手の道の邪魔にならないような
愛し方だったって気付いてましたか
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