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小説
初対面
「陛下、固まっていらっしゃいますよ」
笑うのを堪えながら言う男のその言葉に、夕鈴は我に返った。
入り口でとまどいの表情を浮かべる夕鈴に向かって、黎翔が手招きする。
「夕鈴、こっち来て座って!」
にこにこと、楽しそうな黎翔の言葉に従って、誘われるまま椅子に座る。
すると、逆に、男は立ち上がった。
さっと礼をとる。
「お后様には、お初にお目にかかります。陛下より将軍の位を頂戴しております、世頼章と申します」

***
「え。じゃあ、陛下と世将軍は幼馴染に当たるのですか?」
昼食を囲みながら出た話に驚いた声を上げる夕鈴に、黎翔は笑う。
「うん!そおなんだ!武芸の師が一緒でね。頼章はぼくの兄弟子なんだ!」
そう言った黎翔に向けて器用に頼章は右の眉だけ上げて不服そうな表情を見せた。
その顔を見た黎翔は、ふっと笑顔を下げ、眼を細めた。
「・・・なんだ、頼章。なにか、不服でも?」
「兄弟子だという認識が陛下にあったのかと、驚いていただけです」
「お前の方が、師事し始めたのは1年くらい早いだろう?
兄弟子と言って何が間違っている?」

頼章は、黎翔のその言葉を聞き、くつりと笑った。
「陛下から兄弟子に対する尊敬の念を感じたことがなかったものですから」
「・・・ほう?」
黎翔は眉を寄せ、鋭い視線を投げかける。

普通の者ならその視線だけで背筋が凍る冷たく鋭い視線を、頼章は難なく受け止めた。
それどころか、睨み返すその様子を見て、夕鈴は冷や汗を流した。
この状況をどうにかしなければ、と黎翔と頼章を交互に見る。
そうだ、果物でも持ってきてもらおう、そう思った瞬間。

ふっと空気が和らぎ、黎翔が楽しそうな笑い声を上げた。
「そうか、兄弟子と思ったことないと、ばれていたか」
頼章も、声を上げてはいないものの、微笑を浮かべている。
「ばれていないと思っていたのですか?
それは知りませんでした」
2人で楽しそうに掛け合いのような会話を続ける。
その様子は『幼馴染』という言葉を、夕鈴が納得するには十分で、李順と接する時とは違う黎翔の年相応の様子を見たことが、夕鈴を嬉しくさせた。

夕鈴が思わず笑うと、2人が不思議そうに夕鈴を見つめ、
それに気づき、夕鈴は顔を朱に染めた。


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あきゅろす。
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