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小説
冷たい視線を投げかける
「お前たちは、私が王にふさわしくないという。確かに、私より、王にふさわしいものはたくさんいるだろう」
黎翔は、くつりと笑う。
何代にも渡って王を操ってきた老臣たちにとって、操れない王は不要だった。
「博遠がお前たちにとって王としてふさわしいというなら、そうなのかもしれない」
近縁の男の名を上げた黎翔は、笑みを深くする。
黎翔により、顔を上げることを赦されずにいた老臣たちは、その笑みの、彼らを見る視線の、冷たさを知らない。
声音は、その冷たさに反して、ひどく穏やかだった。
「顔を上げよ」
老臣たちは、揃って顔を上げる。
豪華な衣をまとった若い王は、彼らより上段の椅子に頬杖をつき、座っている。
視線は、下段に注がれ、その眼光の鋭さに、老臣たちは身を竦ませた。
「お前たちに、聞きたい」
先ほどまでの穏やかな声音が一変、冷たいものへ変わる。
「私の血は、王族の血。お前たちに難癖つけられる謂れがどこにある?臣下であるお前たちに、どうこう言う権利があるのか?」
老臣たちは、絶句し、黎翔を見つめる。
「早く答えよ」
黎翔が刀に手をかけると、老臣たちの顔色がさっと青みを帯びた。
老臣たちの中から1人、震える声でそれに答える。
「・・・ございません。大変失礼なことを申しました」
「そうか。では下がれ」

この後、文官の整理が行われ、それが内乱へとつながることとなる。

黎翔が、狼陛下と呼ばれるようになる、ほんの少し前の話。


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