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旅立っちゃってアメ玉作戦 ←クッキー王子の旅立ち


 今日はとてもいい天気。
空には雲ひとつない青空が広がっていて、爽やかな春の風がそよそよと吹いて気持ちがいい。まさにサマルトリアの王子、クッキーが旅立つにはもってこいの天気だった。

 道端には名前も知らない小さな花が咲いていて、風に吹かれてクッキーの旅立ちを見送るようにゆらゆらと揺れていた。
 神様もきっとボクに味方してくれてるんだね!
そんなことを考えながらクッキーは軽い足取りでサマルトリア城の門に向かった。

 サマルトリア、ローレシア、ムーンブルク、ラダトームの四国は『ロトの同盟国』と呼ばれていた。そして、その中でも勇者アレフが建国したローレシア、サマルトリア、ムーンブルクの三国を『ロトの三国』と呼んだ。

 剣術・武術が盛んな国ローレシア、学問・芸術が盛んで緑に囲まれた国サマルトリア、魔法が盛んな国ムーンブルク。サマルトリアは基本的に平和主義なので兵力はほとんど無いが、ローレシアとムーンブルクの兵力は世界でもトップクラスだった。
しかし数日前、大神官ハーゴンの手によってそのロトの同盟国の一つである魔法大国ムーンブルクが滅ぼされてしまったのだ。国王も王妃も魔物の手によって殺され、兵も全滅。国民の八割が逃げ遅れて命を落としたというのだ。

 この報せをローレシアから受けたサマルトリアは、王子であるクッキーをハーゴン討伐の代表として選び出したのだ。が、

「お兄ちゃん、気をつけてね。ケンカしちゃだめだよ。怪我しないでね。悪いことしたら謝らなくちゃいけないんだよ?」

 見送りに来てくれていたクッキーの妹のビスケが心配そうにクッキーを見つめる。
 ビスケはとにかく心配だった。
 剣の修行も魔法の修行もサボってばかりだった兄のことが。思ったことをすぐに口に出して、相手がたとえ国のトップに立つような人でもかまわずに毒を吐く、そんな兄のことがとにかく心配だった。

 戦闘でも人付き合いでも周りの人に迷惑をかけることは目に見えていた。

「クッキー、分かっているとは思うけど、まずは勇者の泉へ行って身を清めてから旅立つんだぞ。ルビス様の加護なしでは旅なんてできないっていうのが慣わしなんだからな」

 ビスケの後ろから、クッキーの父親でありサマルトリアの国王でもあるマルトがクッキーに言う。
 マルトはマルトでクッキーのことを心配しているのだが、あえて口には出さずにいつも通り世話を焼いておく。
 わざわざ見送りに来てくれた二人に、クッキーは笑顔で答える。

「うん、大丈夫。まかせといてよ! ハーゴンくらいボクがちょちょいっと倒してきちゃうからさ」

 しかし、そう言うクッキーは完全な丸腰。道具袋には何かがパンパンになるまで詰め込まれていて、何かを拾っても入れるスペースが無い。
 マルトは溜め息をつくと、クッキーに向かって何かを放り投げた。

「いたっ」

 キャッチし損ねて、マルトが投げた物はクッキーの頭に直撃する。
 頭をさすりながら頭にぶつかった物をクッキーが確認すると、

「棍棒……」

 あまりにも頼りない武器に、クッキーは思わず言葉を失う。
 しかしマルトは息子の命が関わっているのにもかかわらず、豪快な高笑いを浮かべて自分の息子に言い放った。

「修行をサボっていたお前に、剣は早すぎる。棍棒くらいが丁度いい! わっはっは」



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あきゅろす。
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