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メリークリスマスだよ、マリベルさん! −DQZ−


「ねぇねぇ、マリベル。今日は何の日か知ってる?」
「十二月二十五日。クリスマスよ、大バカ者。さっさとプレゼントをよこしなさい」
「……あー、そういうこと言っちゃう?」
「何よ」
 僕がマリベルに話しかけると、マリベルはいつも通りの不機嫌そうな顔で僕を睨み返してくる。きっと取り巻きの男の人たちから、プレゼントは大量に貰った……いや、奪い取ったんだろう。もうすぐメルビンやガボも犠牲になりそうだ。当然僕もマリベルにプレゼントを渡しに来たんだけど。
今、グランエスタードの城下町では島中の人々がプレゼントを買い求めてすごく賑わっているんだ。そんな中でマリベルが喜ぶようなプレゼントを見つけ出すのは至難の業だ。ガボあたりならやってのけそうだけど。あまり人ごみを好かない僕はキーファの友人ってこともあって、裏ルートでプレゼントは事前に入手済みなワケだ。ただ、僕の考えとしてはこのままマリベルに奪い取られる勢いでプレゼントを渡してしまうのは実にもったいない。できればプレゼントを交換したい。だから僕は勇気を出して聞いてみるわけだけど、

「プレゼント交換とか――」
「嫌よ」
 予想通りの即答。悲しすぎる。
「ほら、友達同士でも恋人同士でもプレゼント交換ってやってるでしょ? だから僕たちも」
「お断りよ。そのかわりにお正月にはお年玉をあげるから、いいでしょ?」
 え、僕子供扱い? 幼馴染でしょ、同い年でしょ!
 僕は思わず心がくじけそうになるのをぐっと堪えて、もう一度マリベルに言ってみることにする。
「僕はマリベルのプレゼントがほしいんだって!」
「あぁもう、しつこいわね! いいからあたしにプレゼントを渡しなさい!」
「あ」
 僕が油断した隙に、マリベルが僕のポケットに入っていたマリベルへのプレゼントを抜き取って包装用の紐をほどき始める。ビリビリと包装紙を破いて中身を引っ張り出すマリベル。箱の中身は変わった形のネックレス。マリベルには普通のネックレスよりも変わった形のネックレスのほうが似合うと僕は思う。マリベルにはチワワよりもブルドックのほうが似合うんだよ。マリベルはそのネックレスを早速首につけると、満足そうに微笑んだ。笑ったマリベルは可愛い。
「アルスにしてはなかなか素敵なプレゼントじゃない。ありがたく受け取っておくわ」
 マリベルはそう言うと、手を振りながら家へ戻って行く。
「うん、喜んでもらえてよかったよ……」
 僕もつられて手を振ってしまう。
 マリベルの姿は――もう見当たらない。瞬間移動?


「起きなさい、アルスー! 何時だと思ってるのー」
 翌日、台所からの母さんの声で目が覚めた。時計の針は朝七時前を指している。……眠たい。
「……おはよ」
 僕が目をこすりながら下におりていくと、父さんが朝ごはんを食べている最中だった。そういえば、今日はまた漁に出るって言ったっけ。
「アルス、あんたも食べちゃいなさい」
 そう言って母さんは僕の分の朝ごはんをテーブルに置いて、今度は父さんの弁当を作り始めた。いつも通り、父さんの好物のアンチョビサンドだ。
 僕が席についてご飯を食べ始めようとすると、机の上に何か置いてあることに気がついた。小さな箱みたいだけど。
「母さん、これ何?」
「あぁ、それね。朝マリベルちゃんが置いてったわよ」
「マリベルが?」
 何だろう。マリベルから物をくれるなんて、父さんが漁に出るのを止めたほうがいいかもしれない。きっと明日は嵐だ。
 そんなことを考えながら僕は箱を開ける。せっかくマリベルがくれたものなので、包装紙もできるだけ破らずに丁寧に。やっとの思いで顔を見せたその中身は――
「?」
 昨日僕があげた(取られた)ネックレスの箱と同じだ。
 僕は首を傾げながら箱を開ける。すると、中からは僕が昨日マリベルにあげたのとそっくりなネックレスと一枚の手紙が出てきた。手紙にはこう書かれていた。

『バカじゃないの。今日貰ったネックレスってペアルックってやつじゃない。なるほど、そこまでしてあたしからのプレゼントが欲しかったのね。いいわ、どうせあたしも同じの持ってたし、あげるわよ。……別に前から買ってたわけじゃないんだから』

「…………」
 僕はしばらくその手紙とネックレスを見ながら呆然としていた。マリベルが僕のために用意してくれていたプレゼント。前から用意してたのに、照れ隠しの手紙なんか書いちゃって。

 やっぱり、マリベルはかわいいなぁ! もう!



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