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ハッピー・リターン -DQU-



「ポルター! あーそぼっ!!」

オレが城の外の草原で昼寝をしていると、隣のサマルトリアの王子クッキーがオレのところへ走ってきた。
あいつがオレのところに来て、よかったことは一度もない。
しかも、一国の王子を呼び捨てにするなんて……。
まったく、無礼な奴だ。
そんなことを考えていると、クッキーがオレの顔をじーっと見つめていた。
そして、オレが一体どんな顔をしていたのかは知らないが、オレの顔を見たクッキーが首を傾げて言った。

「あれぇ? もしかして、怒ってる?」

クッキーはオレの顔を覗きこむと、もう一度首を傾げた。
オレは面倒だから何も言わない。
すると、オレが相当怒っているように見えたのか、クッキーは泣きそうな顔をしてその場に座り込んだ。
オレがぎょっとして体を起こすと、クッキーのすすり泣く声が聞こえてくる。
その小さな手で目をこすりながらうつむいている。

ヤベッ、泣かしちまったか!?

あわててオレが謝ると、クッキーがぴたっと泣くのをやめてオレの顔を見た。
何なんだ、こいつは。
さっきまで泣いてたと思ったら、今度はにこにこ笑ってオレを見てる。

「えへへー。ねぇ、ポルタ。ボクの話聞いてくれる?」

クッキーはオレの横に腰を下ろすと、オレの顔を見てにこっと笑った。
まるで女みたいに大きな瞳に少し長めの栗色の髪。
それに、人懐っこい笑顔。
もし、こいつが女ならオレは惚れていたのかもしれない。

「ねぇってば。ボクの話聞いてくれる?」

顔をぐいっと近づけて、クッキーはオレを問い詰める。

「え……、あ、うん」

急に顔を近づけられて、つい間抜けな返事をしてしまった。
クッキーはオレの返事を聞くとまた人懐っこく笑った。
そして、ひざを抱えて座りなおすと空を見上げて話し始めた。

「ボクね、大きくなったらサマルトリアの王さまになるんだよ」

オレが「知ってる」と言い返すと、クッキーはオレの顔をチラッと見て続けた。

「ポルタもローレシアの王さまになるんでしょ?」

オレが「あぁ」とだけ言うと、クッキーはオレの顔を見て言った。

「ボクね、大きくなったらね、サマルトリアを今よりもっとすっごい国にするんだ。それでね」

クッキーはそこまで言うと、えへへと照れるように笑った。
オレが不思議に思って体を起こすと、クッキーはポルタに聞いた。

「ねぇ、ポルタはムーンブルクのプリン王女にあったことある?」

ムーンブルクのプリン王女……。
オレは記憶の糸をたどってみた。
会ったことは、ある。
確か、金髪で……金髪ってことしか覚えてないや。

「あるけど」

記憶にはほとんど残っていないが、一応あったことはあるのでそう言っておく。
すると、クッキーは頬を赤らめて言った。

「プリン王女、かわいいよね。ボクね、大きくなったらプリン王女と結婚するの」

はぁ。
それがどうした、と言いそうになったのをぐっとこらえてクッキーの話を聞く。

「プリン王女ね、ボクがお菓子作ってあげたらすっごく喜んでくれたの。それでね、それでね――」

クッキーはプリン王女のことをべらべらと喋り始めた。

ふーん、片思いかぁ……

オレがぼーっとクッキーの話を聞き流していると、クッキーの話がぴたっと止まった。
終わったのかと思ったオレは、空に向いていた視線をクッキーに戻す。
すると、そこにはむくれたクッキーの顔があった。

「ポルタ、ボクの話きいてくれてないでしょ」

クッキーはオレをじーっと見つめている。
ここで言い訳するのもなんなので、正直に謝ることにする。

「悪ぃ、聞いてなかった。ついボーっとしてて――」

しかし、どうやら逆効果だったらしく、クッキーの表情はどんどん険しくなっていく。
そして、とうとうクッキーは怒って立ち上がった。

「もう! ポルタってば最低! バカ! ポルタなんか、スライムに噛み付かれて泣いてればいいんだよ!!」

そう言うと、クッキーはずかずかと立ち去っていった。

何だったんだ。

夕焼けに染まった空の下で、ポルタは遠くなっていくクッキーの影を見つめていた。



→→→

なんか、ロレサマ風味。
クッキーの片思いの話を書こうとしたんですけど……。
一応、過去の話です。
クッキーはこのときからポルタのことが嫌いなんです。
そして、クッキーは今もプリンのことが好k(ry

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