▽三角関係△ ‐DQU‐
「ねぇ、ポルタ」
クッキーが本を読みながらポルタに話しかけた。
「何だ?」
ポルタは紅茶に砂糖を入れながら答えた。
お互いに相手の顔は一切見ずに会話を続ける。
「例えばだけどね」
クッキーは本から目を離さずに続ける。
「ボクとプリン、一緒のベットで寝るならどっちがいい? あっ、プリンはボクのことが好きだとします」
突然の質問に、ポルタは飲んでいた紅茶を吹き出した。
クッキーは表情を全く変えずに本を読んでいる。
「はぁ!? お前、何言って――」
ポルタが取り乱しているのを見てため息をつくと、読んでいた本をポルタに見せた。
どうやら恋愛小説のようだ。
「三角関係」
クッキーが小説を指差しながら言った。
「はぁ?」
ポルタが何のことか分からないという顔をすると、クッキーは喋り始めた。
「あのね、ボクがプリンのことが好きで、でもプリンはポルタのことが好きなの。でもね、ポルタはボクのことが好きなんだよー」
「何だ、その危ない関係は」
楽しそうに笑うクッキーに、ポルタは冷たく言った。
「だいたい、何の本読んでるんだ?」
ポルタはクッキーが読んでいる本を取り上げた。
やめてよー、とクッキーが取り返そうとしてくるのをひょいと避けて、ポルタは本に目を通した。
主人公は女子にモテモテの男子生徒。
その主人公が、とある女子生徒に想いを寄せる同級生と出会う。
そして、彼の恋に協力しようとするが、なんとその女子生徒が好きなのは主人公だった。
そして、主人公は同級生の男子生徒に魅かれて――
「何なんだ、この危ない恋愛小説は!!」
ポルタは本を床に叩き付けた。
「宿の前のお客さんが忘れていったみたい」
クッキーはポルタが叩きつけた本を拾いながら言った。
「……お前さぁ、そういう本を読むのはよくないと思うぞ。ほら、お前すぐ変なものに影響されるし。つか、これR15って書いてあるぞ」
ポルタが言った。
すると、クッキーは首を傾げて聞いた。
「変な影響って?」
ポルタは、少し考えてから答えた。
「……四年前、お前は魔女が出てくる本を読んだ。その本にはトカゲのスープを魔女が飲んでいるシーンがあった」
クッキーは、うんうんとうなずいた。
「すると、その年のロト祭りではお前が作ったトカゲのスープがオレの皿に注がれていた」
クッキーは、再びうんうんとうなずいた。
「だからお前がこういう本を読むと、そっち系に走って行く気がする」
クッキーは、うんうんとうなずいた。
ポルタは、それだけだと言うと床に座った。
すると、クッキーはポルタの隣まで歩いて行って耳元でつぶやいた。
「……そういえば、ベットあるね。ぎゅって抱いちゃおっか?」
直後、ポルタの表情が凍りついた。
「……気持ち悪いこと言うんじゃねぇよ」
ポルタの額に、変な汗が流れた。
明らかに、動揺している。
クッキーは、思わず吹き出しながらポルタに笑いを堪えながら言い返した。
「ベッド……ぷぷっ、記念すべき初夜だね」
言い終えると、爆笑しながら部屋から出て行った。
「……気持ち悪ぃ」
ポルタはぼそっとつぶやくと、毛布に包まって床で寝ることにした。
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