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勇者の奮闘 ‐DQV‐


「なぁ、ナル」

僕は隣にいた僕にそっくりな少女――双子の妹、ナルに話しかけた。

「何?」

ナルはこっちを見ずに答えた。
僕はいつものことなので気にせず続けた。

「僕は旅に出ようと思う」

僕は遠い空を見ながらナルに言った。
ナルは、ふーんとそっけない返事をすると僕のほうを向いた。
そして、顔をぐいっと近づけて言った。

「お兄ちゃん、もう出てるよ。ほら、もうバラモスは目の前」

ナルはため息をついた。
どうやらナルはあきれているようだ。
……そんなナルもかわいい。
僕がボーっとしていると、ナルは僕の背中をバシッと叩いて言った。

「ほら、お兄ちゃん。パパの敵を打つんでしょ!!」

ナルはもう一度僕の背中を叩いた。
でも、まだ死にたくない。
僕たちの父さんだってバラモスにはかなわなかったんだぞ。
本当に僕たちが倒せるのだろうか。

「ねぇ、お兄ちゃん。私ね、パパが大好きだよ」

ナルが小さな声で呟いた。
ナルはバラモスがいる部屋の扉を、ただ見つめていた。
……そうだ、僕たちは父さんの意思を継ぐんだ。
死んだら僕がその程度だったってことだ。
……いや、死にたくはないけど。

「行くよ、お兄ちゃん」

ナルが扉に手をかけた。
僕もうなずくと反対側の扉に力をこめた。
扉はぎぃっと不気味な音を立てて開いた。
中にはバラモスがいた。

「ついにここまできたか。アレルにナルよ」

バラモスは僕たちを睨みつけながら言った。
その視線だけで、足がすくみそうになった。

「この大魔王バラモス様に逆らおうなど、身の程をわきまえぬ者達じゃ」

バラモスはゆっくりと立ち上がった。
――来る!
僕たちは剣を抜いて構えた。

「……ここに来たことを悔やむがよい。もはや再び生き返らぬよう、そなたらのはらわたを喰らい尽くしてくれるわっ!」

そう言うとバラモスは僕たちに襲い掛かってきた。

「ギラッ!!」
ナルが呪文を唱えた。
バラモスが怯んだ一瞬の隙をついて、僕は剣をもう一度構えなおしてバラモスに向かって走って行った。

――ガシィン!!

バラモスの城に、鋭い金属音が鳴り響いた。



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あきゅろす。
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