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ちびっこ王子の冒険


これは、5年前のロト祭り・・・ポルタが10歳、クッキーが9歳だった頃の話。


「えっへん! ポルタ見て!! ボクね、いつでもラダトームに行けるようにね、旅の扉作ったんだよー♪」

クッキーは、不思議な光を帯びている渦を指差した。

「旅の扉って何だよ」

ポルタはそんなもの見たことないので、何のことかわからない。

「えへへ。まぁまぁ、とりあえずこの中入ってみてよ。行くよーっ!」
「うわあああああ!!!」

クッキーはそう言うと、ポルタの手を引っ張って渦の中に飛び込んだ。


***


2人は旅の扉で別の場所へワープした。
しかし、着地に失敗してそのまま地面に落ちてしまった。

「いったーい」
「いててて・・・」

2人は体をさすりながら、辺りを見回した。
確かにラダトーム城だ。
しかし、何か様子がおかしい。

「・・・なぁ、クッキー。ラダトームってこんなにキレイだったか?」

ポルタが聞いた。
ちょっと古びた感じだったはずラダトームの壁は、まるで最近建てられたようにきれいになっていた。

「塗りなおしたのかなぁ? ・・・って、あれ!?」

クッキーは壁を見ていて急に大きな声を出した。

「ない、ない!! 旅の扉がない!!」

旅の扉は、もうひとつの旅の扉と繋がっている。
しかし、ここには旅の扉がなかった。

「どうしよう・・・。ボクたち帰れないよ・・・」

クッキーが泣きそうな声で言った。
それを見たポルタが何か言おうとしたその時、

「おい、そこで何をしている!!」

ラダトームの兵士に見つかって、2人は城の中へ連れて行かれてしまった。


***


「王様、この2人が城の裏で何か怪しかったので・・・」

兵士は王に報告した。

「怪しくなんかねぇよ! オレはローレシアの王子、ポルタ!! こっちのちっこいのがクッキー。サマルトリアの王子だぞ!」

ポルタは兵士を睨みつけながら言った。
すると、兵士とラダトーム王は顔を見合わせてクスッと笑った。

「君たちどこから来たんだ? ローレシアやサマルトリアなんて国はないよ。王子様ごっこでもしてたのかい?」

近くにいた別の兵士が、ポルタの頭をなでながら言った。

「えー? でもボク、2年前に来たよ? ロト祭りのとき。そのときに旅の扉作ったんだよー」

クッキーはムカッとして兵士に言った。
ポルタは相変わらず兵士をにらんでいる。
すると、後ろの大きな扉が開いて、ひとりの兵士が入ってきた。
とても嬉しそうな笑顔を浮かべながら、ラダトーム王に耳打ちした。
それを聞いたラダトーム王も一瞬で笑顔になった。

「ポルタとクッキー・・・と言ったな。2人もそこで見ているといい」

ラダトーム王はポルタとクッキーを部屋の隅によけると、玉座から立ち上がった。
それとほぼ同時くらいに、大きな扉から人が入ってきた。
鎧を着ている15,6歳くらいの少年と、いかにもひ弱そうな少女だった。

「おぉ、勇者アレフよ・・・!! よくぞ戻ってきた!!」

ラダトーム王は目にうっすら涙すら浮かべている。
ポルタとクッキーは何のことかサッパリ分からない。

「勇者アレフよ。よくぞ姫を連れ戻し、竜王を倒して――」

「「勇者アレフ!?」」

ラダトーム王がまだ言い終わらないうちに、ポルタとクッキーが叫んだ。
クッキーは「あっ」と口を押さえたが、ポルタは勇者アレフと呼ばれた少年の下へ走っていった。

「おい、お前!! 竜王を倒したのか!?」

少年はいきなり見知らぬ子供にそんなことを聞かれて驚いていたが、すぐに冷静さを取り戻して言った。

「うん。そうだよ。もう魔物に怖がらなくてもいいんだよ」

少年はそう言うとポルタの頭をなでた。

「違うよ!! 竜王って100年前に倒されたんじゃなかったのかよ!!」

見知らぬ子供に訳のわからない質問をされ、少年は困ってしまった。
すると、近くにいた兵士がポルタを少年の元から離した。

「あの・・・。この子供たちは・・・??」

少年はラダトーム王に尋ねた。
ラダトーム王も、困ったように首をかしげると話の続きをし始めた。

「・・・では、アレフよ。本題に入ろう。私はお前に王位を譲ろうと考えている」

ラダトーム王がそう言うと、少年は静かに首を振った。

「申し訳ありません、王様。僕はラダトームを出て新しい国を作ろうと考えているんです」

少年が言うと、黙って見ていたクッキーが「はいはーい!」と手をあげて言った。

「ローレシアとサマルトリアとムーンブルクでしょ!?」

少年は驚いたように言った。

「何で知ってるんだい?」

クッキーは満面の笑みで答えた。

「えへへ、だってボク、サマルトリアの王子だもん!」

すると、ポルタとクッキーの体が不思議な光に包まれた。
最初、旅の扉でワープしたときと同じ光だ。
すると、ポルタは少年に向かって叫んだ。

「オレはポルタ!! ローレシアの王子でお前の子孫だ!! オレがいる限り世界はずっと平和だからな!! 安心していいぞ!!」

言い終わると、2人は不思議な光に包まれて消えた。
少年はクスッと笑うと、姫の手を取って部屋から出て行った。


***


「いったぁい」
「くそっ! またかよ・・・」

ポルタとクッキーはまた落ちていた。
辺りを見渡すと、どうやらサマルトリアに戻ってきたようだ。
すると、壁の向こうからプリンがやってきた。

「あっ、いた! ふたりとも急にいなくなっちゃうからみんなで探してたんだよ! はやくみんなのとこ戻ろ」

プリンは二人の手を取ると、城の中庭に向かって歩き出した。
中庭には3人の親や国の兵士たちが集まっていた。
ポルタとクッキーを探していたらしい。
2人の姿を見ると、ローレシア王とサマルトリア王が走ってやってきた。

「2人とも、どこへ行ってたんだ!!」

ローレシア王が怒鳴った。
後ろではサマルトリア王がそれをなだめている。

「えへへ、勇者アレフにあいさつしてきたんだ! なっ、クッキー!」
「うん!」

ポルタとクッキーは顔を見合わせて、あははっと笑った。

空の上で勇者アレフも笑っているような気がした。


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