6.歪んだ心の行き先 「ね、寝れなかった…」 洞窟の中に入り込む朝陽と鳥の鳴き声を聞きながら、朝の訪れを感じる。 野宿というコンディションの悪さに加え、隣で俺の腕に抱きついて眠るエリーゼ。 昔も大胆なことすると思っていたが、今それをするのは卑怯だ。 (それとも、男として見られてないってことか…?) エリーゼにとって俺は何なんだろう。 いやむしろ。 俺にとってエリーゼは何なんだ? 隣で幸せそうに眠る姿が愛しくて、悔しくて。 そっと近付くと、柔らかな唇が目に映った。 「………っ…駄目だ!」 視線を反らし首を振ると、エリーゼがんっ、と小さく息を漏らす。 「朝…ですか?」 「おう、おはよ」 「…はっ!もしかして私、そのまま?」 急に距離を取ったエリーゼに、アルヴィンはいつものようにニヤニヤと笑みを浮かべて。 「いやぁ、興奮して寝れなかったぜ」 「…!!…アルヴィンの…アルヴィンの…!!」 バホー!!!! いつか聞いたフレーズで、頬を強く殴られるのだった。 *** 「二人とも久しぶり!…って、何それ?」 「何でもないです」 「そうそ、何でもねーよ」 イル・ファンに到着し、早速研究所に向かうと白衣姿のジュードが出迎えてくれた。 そして不機嫌なエリーゼと、頬に赤い痣のあるアルヴィンを見て吹き出すように笑った。 「ジュード!なんで笑うんですか!?」 「なんとなく想像がつくな、って思って。それよりエリーゼ、綺麗になったね」 「…っ!!…ジュードこそ、大人っぽく…なりました…」 さらりとキザなことを言うジュードは良いとして、なぜそんなに照れるんだエリーゼ! 俺の時と反応が違うくないか!? 何となくそれが気に入らなくて、昔のようにジュードと肩を組むと。 「優等生、随分偉くなったな」 「アルヴィン…く、苦しい…」 「ジュードに意地悪しないで下さい!」 「…へいへい」 「けほっ…、ホント、いじめっ子なんだから…」 困ったように笑うジュードは、エリーゼの言う通り大人になった。 しかも17歳にして源黒匣(オリジン)研究の主任だという。 「で、アルヴィンは何してるの?マダオ?」 「誰がマダオだ!まぁ、故郷の為に色々とな…」 「エレンピオスの人もまだまだ大変そうだしね」 「あ、あの!」 くい、っとジュードの腕を引いたエリーゼに、ジュードは少しだけ屈んで「何かな?」と視線を合わす。 「私、研究所の中を見たいです!」 「そうだったね、行こうか。アルヴィンは?」 「俺はまあ…ぶらついてくるわ」 じゃあな、と未だに少し不機嫌なエリーゼに手を振れば、「後でご飯一緒に食べに行きますからね!」と呟いて去って行った。 「別に、放っておいてくれて良いのにな…」 そんなことを言いながらも、少しだけ自分の心が弾んでるのが悔しかった。 6.歪んだ心の行き先 [*前へ][次へ#] |