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ONLY GLORY
25本目:ついに動いた・・・
14回表の天零の攻撃は光明のピッチャー強襲のヒットにより無死一塁。
打席には7番の鳴海が立つ。


今日の鳴海は5打数2安打で二塁打も放っている長打の打てる打者。
勿論、守備陣も長打には警戒をしているわけである。


打席に立つ鳴海を見つめる秀二。
その一球目に動いたのはなんと光明。



「走った!!」


光明が盗塁のスタートを切った。
秀二が投じたのはフォークであったため浦原が捕球をするも間に合わないと見て投げるのを止める。


意表を突いた形となった光明の盗塁で無死二塁の勝ち越しのチャンスを作った天零。
これには天零ベンチからは大きな歓声と激が飛び交う中、打席の鳴海は一度打席を外し大きく深呼吸をする。

また秀二もロージンを手に持ちながら大きく深呼吸をする。
大粒の汗が額に流れる秀二。

ここまで球数も190球近く投げており体力的にも限界が近いはずであるが、秀二は表情には絶対に見せていない。

エースとしてのプライド言うよりはもはやアスリートとしての意地である。
意地でも投げ切る、そして勝つという執念が見えるマウンド上の秀二。

その気迫あふれるピッチングは鳴海にも襲う。
二球目・三球目とストレートを投じる秀二に対して鳴海はかろうじてカットで逃げる事しかできない。

ついに秀二の投球数も今ので199球。
次のボールで今大会初の200球と言うよりこの投球数が異常と言うべきか・・・

そして注目の200球目のサインが浦原から出され秀二はセットポジションから投じた。
浦原の要求したボールはフォーク。

ここまで天零はフォークを完璧に打ったのは沢村のみと他の打者は打てていない。
決め球に絶対的なフォークを投じたことを選んだ秀二と浦原のバッテリー。

そして200球目を投じた。




(あ・・・落ち…)


ハッと感じた浦原。
また秀二自身もリリースの瞬間に違和感を感じた。


(抜け…)


その感触はボールが抜けなかった感触。
秀二の投じたボールは高めへと投じられていくが、そのまま落ちなかった。


棒球と化したボールを見逃すはずがなかった。
鳴海はボールを思いっきり振りぬくと弾き返された打球はセンターへの大きな弧を描く打球となりボールを追う池本の頭上を越えていくと、打球はフェンスに直撃する打球となりワッと球場が湧きあがる。

当たりが良すぎたのかフェンスに当たった打球は直接池本のグラブへと納まり内野へとすばやく返したことで打った鳴海は二塁には行けなかったが、ホームを踏んだのは光明であった。

ホームを踏み大きくガッツポーズをとる光明にベンチの選手たちは頭を叩くなど手荒く迎えられ、打った鳴海は一塁上でベンチにグッと拳を挙げると神威が笑顔を浮かべながらグッと同じように拳を挙げた。


ついに勝ち越された陵應学園。
200球に到達した秀二はついにがっくりと両手を膝に着きながら頭を下に向ける。


大歓声が止まない球場。
その大歓声が秀二を呑みこもうかという雰囲気が漂う中、秀二は再び顔を上げ、後続を打ち取ったのである。




次回、いよいよクライマックス。



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あきゅろす。
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