ONLY GLORY
21本目:ホンマにカッコええ
8回に秀二の動揺を着かれた光明の勝ち越しホームラン。
マウンド上の秀二はまさかの展開にがっくりとうなだれ、天零ベンチでは光明が他の選手らと激しくハイタッチを交わし沸くに沸く。
そして天零の攻撃は続く。
7番の鳴海が二球目の甘い変化球を弾き返すとライトの頭を越えていくツーベースで追加点のチャンス。
ここで8番の榊が送りバントで三塁へと進むと打席には6回代打で出た東郷の代わりにライトへ入った草薙。
ここで浦原がタイムを取りマウンドへと向かうと自然と他の選手らもマウンドへと向かう。
するとすぐに浦原はミットでポカンと秀二の頭を叩くと他の選手はキョトンと驚いたような表情をみせ、秀二も同じように驚いたように浦原を見る。
「さぁシュウ。動揺は消えたか?」
と笑みを浮かべながら問いかける浦原に秀二もニッと笑みを零すと
「おかげさまで、まぁ少しビックリしたけどね…」
とポツリと呟く秀二に他の選手らも笑みを零すと彼らは全員で一斉にグラブタッチを交わすとグラウンドへと散らばり試合再開。
マウンドに立つ秀二の表情が先ほどと打って変わってよくなったことに気付いた京壹監督。
そして彼と同じ時間に気付いたのは三塁ランナーの鳴海。
(立ち姿が…大きく見える)
鳴海がそう感じた通り、秀二は草薙を浅いセンターフライに打ち取りランナーの鳴海はスタートが切れずこれでツーアウト。
先頭の緋悠隼人にはじっくり見られて四球を出してしまうも次の2番天海陸斗に対してはオールストレートでの空振り三振を奪って見せスリーアウトのチェンジとした。
「よしよく抑えた!!」
ベンチへと戻る秀二たちにパンパンと手を叩きながら声をかける京壹監督。
秀二はベンチに戻るとグイッと飲み物を飲み干す。
「秀二、まだいけるか?」
「勿論です!!」
京壹監督の言葉に元気に答える秀二にそうでなくてはと言った表情で頷く京壹監督。
しかし陵應打線はここでは沈黙。
8回裏の8番浦原からの打線も浦原がショートゴロ、9番に代打山谷が出されるも空振りの三振、そして先頭の達哉も榊のテンポの良い投球に対して三振を喫してしまいチェンジ。
これでついに最終回の9回となり表の天零の攻撃も秀二は3番沢村から始まるクリンナップを沢村を投手ゴロ、桜井を三振、そして最後の南戸を三振し奪ったストレートの球速に球場がどよめいた。
「ここで149キロて…」
と掲示板を見ながら呟く光明。
ここまで秀二の投球数は120球を越える力投を見せる中でのこの球速が出ると負うことはまだまだ力があるという事である。
しかし9回は2−1の天零リードのまま陵應最後の攻撃。
マウンドには引き続き榊が上がることとなる。
「今日の榊君は今までで一番の調子。神威君を行かせたいけど…ここは榊君に任せるわよ」
と最後を榊に託す桐生監督。
どっしりと構える桐生監督の姿も天零をここまで進めてきた理由でもあろう。
最後のマウンドに立った榊に対する陵應打線は2番の田中山から。
球場は陵應の大物食いに期待が寄せられる中、打席に田中山が立つも榊の3球目を詰まらせてしまいサードゴロ。
ワンアウトとなると球場が大歓声が沸き起こる。
しかし、次の3番片瀬が大歓声を切り裂くような左中間へのツーベースを放つ。
「おし!」
片瀬この試合初ヒットとなりグッと小さくガッツポーズをとる。
この二塁打で天零ベンチは慌ただしくなりブルペンへと向かうのは三番手の神威。
神威が出てきたことにより京壹監督は内心焦る。
(まずい、遠野が出てきたら…ここで決めてくれよ、晋太郎)
と晋太郎に託す京壹監督。
今日の晋太郎は無安打も二度ライトへ強い当たりを放っている。
打席へゆっくりと立つ晋太郎。
その晋太郎に対し榊はインコースをせめていくも晋太郎はファールで粘る。
ファールで粘ること7球が過ぎてきたところで鳴海は晋太郎を見てグッとアウトコースを構える。
(最後はアウトコース低めに決めろ、これでゴロを打たせる)
とミットを構える鳴海。
榊の8球目はドンピシャの外低めのストレート。
しかし晋太郎は鳴海の予想を裏切るようにしっかりと踏み込んでそのボールを打ちに行った。
キィィンと言う快音が鳴り響く。
晋太郎の振りぬいた打球は三塁線を鋭く抜けていくレフトへの二塁打を放ち二塁ランナーの片瀬がガッツポーズをしながらホームインをし同点とした。
「・・・よし」
と小さくガッツポーズをする晋太郎に祝福の激を投げかける陵應ベンチ。
また片瀬はベンチの選手たちとバチンバチンと強くハイタッチを交わしながら喜び合う。
「ホンマにカッコえぇなぁ晋太郎さんはぁ!」
と笑顔を零しながら晋太郎を褒めちぎる片瀬。
陵應ベンチでは同点ながらも大騒ぎとなっており勢いがグングンと上がっている中、天零ベンチが動きだし桐生監督が投手の交代を告げる。
『天零高校、ピッチャーの交代をお知らせいたします。榊君に代わりまして…遠野君。ピッチャー、遠野君』
その瞬間ではあるが、陵應ベンチは少しピリッと先ほどの盛り上がりムードが緊張に走った瞬間である。
次回へ続く。
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