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ONLY GLORY
125発目:・・・勘だよ。
九回ついに同点へとこぎつけた陵應。
湧き上がる陵應ベンチとスタンドの応援団。

羅新学園のベンチは一瞬ではあるが静まり返るも、直ぐに冷静になり監督はマウンドに伝令を送る。



「お。伝令」


とマウンドに集まる選手に1人のベンチメンバーが近寄ると神嶋に向けて話す。



「監督からだ。いつもどおりにやれってさ」


と言い残しマウンドから去る伝令の選手にマウンドに集まった選手たちは交互に顔を見合いフッと笑いが漏れると、全員で拳を突き合わせ散る。



「流石は羅新…同点なんて物とせずか…」


マウンド上のやり取りを見ながらそう呟き苦笑いを見せる京壹監督。
その伝令の通り。羅新の神嶋は次の晋太郎をセカンドゴロに打ち取り陵應の勢いを見事に消してのけたのである。


「さぁ打っていこう!!」


と激を飛ばしあう羅新ナイン。
しかし乗りに乗るのは羅新だけではない。
陵應のマウンドに立つ秀二もまた同点にしたと言う勢いに乗っていた。



羅新の打順は2番から。
その羅新の2番打者は初球から打ちに行くも完全の力負けとなる投手へのフライへとなりワンアウト。
このピッチングで羅新学園の監督は感じた。


(球威の衰えはない…しかも同点と言う結果に火が再燃しだした。チッ、これだから困るんだよ・・・才能ってやつぁ)

正直秀二の体力はすでに限界。
ここまでに投球数も150球を越える熱投ぶりである。
羅新も秀二に対してもファールで粘りに粘ると言う投手殺しとも言える戦い方でここまで来ている。
また羅新エースの神嶋も120球を越える投球を見せつけ、奪三振も15個をマーク。


両エース共に流石と言えるものである。
神宮大会の決勝でこの試合は来ている観客にとっても最高の試合になったであろう。


そして秀二は三番打者を三球三振に打ち取りツーアウト。
しかも最後のボールの球速は150キロをマーク。
ツーアウトとなった瞬間に球場中が大歓声に包まれた。

そして次打者は4番の竜崎。
竜崎はマウンドの秀二をジッと見つめながら打席へと入ると大きく深呼吸をしバットを構える。

秀二の一球目はアウトコース高めへのストレートで球速はまたしても150キロ。
二球目は低めへと決まるフォークを投じこれを竜崎は空振る。

(当たらん…)

落差のあるフォークに掠らせることの出来ない竜崎の表情が曇る。
すると竜崎は一度打席を外し深く長く深呼吸をする。


(・・・よし)


そして打席へと入る竜崎。
浦原からのサインに頷く秀二は大きく振りかぶり3球目を投じた。
投げられたコースはアウトコース低めのストレート。

神宮のスコアボードには…152の文字がパッと映る。
完璧なコースへの150キロ越えのストレートにキャッチャーの浦原は“決まった”と確信をした。
しかし、その視界はバットに遮られた。



カキィィン…


次の瞬間に鳴り響いたのはミットに収まる音ではなく乾いた快音。
振りぬいた竜崎のバットにボールが当たると高い放物線を描きながらレフトへと舞い上がる。
バックしながら打球を追うレフトの山谷。
秀二もマウンドから打球の行方を追うと打球はポール際に飛んでおり秀二を始め他の選手は切れるのをジッと祈るように見、羅新ナインたちはベンチから身を乗り出しながら打球を追う。

そして、打球はコーンと言う音をならせながらなんとレフトポールの外側ギリギリに当たる打球となってしまい審判はグルグルと腕を回す。
その瞬間、秀二は青空広がる天を仰ぐように上を向き立ち尽くし浦原はガックリと両ひざを着きながらうな垂れる。

そして打った竜崎はおそらく今大会初めてであろう高く右腕を突き挙げながらダイヤモンドを回った。
ホームに出迎える羅新の選手達に手荒く迎えられる。


そして神嶋が竜崎をガッチリと握手をすると一言竜崎に問いかけた。


「よく打ったな」

という問いに竜崎はニッと軽く笑うと軽くこう言った。


「あぁ、勘だよ。上手く当たった」


「おいおい勘かよ…外れてりゃあアウト…全くお前って奴は…最高の相棒だよ」


とガッチリとハグを交わしたのであった。
神宮大会は羅新の劇的ともいえるサヨナラホームランで羅新学園優勝で幕を閉じることとなった。
そして陵應側のスタンドでは、秀二と浦原がグッと握手をしていた。


「悪いな、勝たせてやれなくて」

「いいや、楽しかった。それに最後は打った竜崎が凄いよ」

と笑顔で話す秀二に浦原も笑顔で返す。
陵應の選手たちに涙は無かった、まだ終わりじゃあない。
そう言った表情をしていた彼らの目もまた、先を見据えていたのであった。



明治神宮大会高校の部。
優勝校・羅新学園(東京代表)


次回へ続く。


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