ONLY GLORY
123発目:だからこそ・・・
5回のチャンスをモノにできなかった陵應。
その裏の羅新の攻撃となるが、マウンドに秀二と浦原が話をしている。
「すまん」
と最初に謝る浦原に秀二は笑顔で浦原の胸をポンとグラブで軽くたたく。
「切り替えて」
「・・・あぁ」
と秀二の言葉に返事をする浦原であるがどこか元気が無いようにも見える。
それもそのはず、5回の得点のチャンスをモノにできなかった打者である浦原にとってはこの上ないショックの大きさである。
しかもオールストレートの三振を喫すると言う事でさらにショックが重くのしかかると言う事だ。
マスクをかぶり座る浦原。
切り替えていかなければならない場面であるが、我に帰るのが少し遅かった。
キィィィン…
「あ!!」
打席に立ったのは4番の竜崎。
その竜崎は秀二のストレートを振りぬくとお返しと言わんばかりのライト線への痛烈な当たりを放ちツーベースヒット。
これで浦原自身も我に返ったのであるが投じた秀二の球自体は決して悪くは無かった。
これはもう打った竜崎を褒めるしかない。
竜崎のツーベースでチャンスを作った羅新とピンチを迎えた陵應。
そして打席には5番の神嶋。
神嶋はこの大会得点圏は約4割、チャンスで迎えてはならない打者でもある。
しかし秀二と浦原バッテリーは勝負。
その初球を投じるとインコースに決まるストライクとなる。
(良い球だ…)
ボールを見た神嶋は感心をした。
神嶋に取って村神秀二はある一種の憧れであり目標でもあった。
中学の全国大会で戦ってから彼は秀二に追いつけ追い越せと必死になった。
どんなにつらい練習でも耐えた。
そして高校野球の舞台でついに決勝と言う最高の場所で対峙することになった。
しかも秀二は神嶋の予想をはるかに超える完成された投手となっていた事に喜びを感じざるを得なかった。
(だからこそ…勝つ!!)
そう心に決めバットを握る神嶋。
(シュウ、ここは落とそう)
とフォークのサインを出す秀二にコクリと頷く秀二はセットポジションから投じた。
そしてそのボールに対し神嶋は思いを込めるようにストンと落ちていくフォークにバットを合わせる。
キィィン…
その思いを込めたフルスイング。
ストレートを打ち返した打球は右中間の間をポンと抜けていく打球となり大歓声が球場から沸き上がると二塁ランナーの竜崎はホームベースを踏み得点を入れた。
そして打った神嶋は二塁へと行きタイムリーツーベース。
ついにこの試合初めての得点が羅新に入った。
マウンド上で立ちつくす秀二。
表情からは読み取れにくいが内心はかなり崩れかけている。
そして強豪羅新はそこを逃すことは無い。
キィィン…
「あ!!」
点を取られた直後の初球の甘いストレートを狙い打った羅新の打者。
打球は低い弾道で秀二の右を抜けていく打球となりフッと打球の方向を振り向きながらも抜けたと諦めかけていたが…
そこにはダイビングキャッチをした達哉がおり、グラブのパシィと言う乾いた音が鳴り響いた。
「アウト!」
ンーバンでの捕球となりアウト
「ショート!!」
捕球をしたあとすかさず起き上がり慌てて戻ろうとする神嶋のいる二塁へと投げるとショートの田中山が完ぺきなカバーでボールと捕り審判の判定はアウト。
すると達哉がマウンドの秀二へ近づき話し出す。
「まだ1点取られただけだ!!気落ちすんな!!」
と激にもにた言葉を言う達哉に秀二はフウッと大きく深呼吸をするとキッと次打者を睨む。
そして息を吹き返したか、続く7番打者を三振に取るチェンジとするのである。
しかし、1点とはいえど相手は羅新学園。
そしてマウンドにはエースの神嶋。
同点にするのも至難とも言えるこの状況ではある。
そして試合は進み、羅新学園が1点リードのまま回はついに最終回となってしまった。
次回へ続く。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!