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ONLY GLORY
73球目:なにもあそこまで飛ばさんても…
惜しくも4−2で敗れてしまった陵應学園。
しかし彼らにとっては敗北以上に多くの物を手に入れられたであろう。


「どうもありがとうございました〜!!」


試合終了の挨拶を交わす両校の選手たち。
すると俊哉が秀二の所へと近寄り手を差し出しながら話す。



「ナイスピッチング♪」

「い、いえ…俊哉さんこそナイスバッティングです」


照れながら握手を交わす秀二。
続いて隆彦や望月らとも握手を交わしこれで解散かと思われたその時。


「あ。わりぃ、もう一勝負したいんだけど」


そう言ったのは望月。
選手たちが驚きながら彼の顔を見ると隆彦が話す。


「誰と?」

そう質問をぶつける隆彦に望月はある人物を指さしながら言った。


「あの。神坂って奴」


「ん?俺ですか?」


なんと指名したのは本日傍観者として来ていた神坂。
さすがに神坂も自分が指さされるとは思っていなかったのかキョトンとしていた。


「あの神坂って奴。高一にしてすでに高校bPスラッガーの呼び声が高いんだろ?」

「ほう…」


望月の言葉にいち早く反応する明弘。
当の神坂はどうしたらいいのか分からずポリポリと頭をかいていると秀二がバットを差し出しながら言う。


「ほら。御指名だよ?高校bPスラッガーさん?」

「ん…あぁ。指名なら仕方がないか」

そう言いながら秀二から金属バットを受けとる神坂。
この光景にギャラリーはざわつきだす。


「あれ?なんか勝負始まるよ?」

「ほんとだ」

グラウンドを見ながら優衣が言うと明菜が頷く。
そして隣で帰る気満々だった明日香も呼びとめられる。


「え〜?早くご飯食べたいのに〜…」

「まぁまぁええんか。後少しやねんて」

ぶつくさと文句を言いながら打席に入る神坂を見る明日香。
すると明日香は何かを感じたのかポケッとしながら見ていた。


「どしたん?」

「へ?ううん、なんでもない」

弥生の言葉で我に返る明日香は不思議そうに首を傾げながらも2人の勝負を見始める。
また守備の選手たちも着きいよいよ試合開始。


「1打席勝負で良いか?」

「はい。構わないです」

望月の言葉に陵應のヘルメットをかぶりながら言う神坂。
そして彼がバットを構えて望月を睨むと一瞬にして場の雰囲気が変わった。


(な、なんだよ…コイツの威圧感は)

神坂から醸し出される威圧感。
この威圧感はバッテリーのみではなく守備についてる選手全員に感じられていた。


(ここまで来るのかよ…)

センターの深いところで立つ俊哉にさえ感じる彼の威圧感。
そんな中、隆彦から一球目のサインが出された。


サインに頷く望月。
そして彼は威圧感を振りはらうように大きく振りかぶり一球目を投じた。


「…む…」

投げられたのはカーブ。
この球に思わず口に出してしまう神坂。


(よしスイングのタイミング外した…打ち存じだ)

初球から打つことを感じ取っていた隆彦の読みが当たった初球のカーブ。
しかし、隆彦は次の光景に驚く。



(こ、コイツ…止まってやがる…)


これは前作の作品を真面目に読んでいた方なら分かるであろう。
前作にて俊哉がカーブ打ちの時に行ったスイング中に体を少し止めてタイミングを合わせると言う物を神坂がやってのけていた。


しかし俊哉の打ったのは望月に比べても程度が落ちるカーブ。
だが神坂はその長身を活かすことでボールにバットをとどかすことが実現できたのである。




キィィィン…


センターへと弾き返される打球。
しかしセンターの俊哉はその瞬間走り出そうとはせずに諦めておりマウンドの望月も苦笑いをしながら打球を見ていた。


「うひゃぁ…何もあそこまで飛ばさんても…」


苦笑いしながら言う望月。
その打球はすでにグラウンドの外へと消えていったのであった。




次回へ続く。


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あきゅろす。
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