ＯＮＬＹ ＧＬＯＲＹ
６９球目：やられた…
二死二三塁。
このチャンスで迎える打席には一番怖い打者である俊哉。
一度は敬遠の文字も出てきた陵應であるが秀二は勝負を選択。
こうして六回の裏に秀二はターニングポイントとも言える場面が出てきた。
（さぁ。この人だ！抑えんのに全ての手を使うぜ！！）
そう気合いを入れながら座る浦原。
そしてサインを出すと秀二はコクリと頷き一球目を投じた。
ズパァァン…
初球はストレート。
これを俊哉は見送りストライク。
続く二球目は低めへ外れるボール、そして三球目もボールとなり１ストライク２ボールとする。
フウッと息をつき汗を拭う秀二。
しかし彼の表情は笑っていた。
（凄い…楽しい…この人ともっと闘っていたい）
そして次の三球目…
キィィィン…
「あ…」
投げられた抜いたカーブ。
しかし俊哉はこれを上手くタメを作り弾き返した。
「ファールボール！！」
しかし打球は大きく左に反れていきファールとなると秀二は安堵の表情を浮かべるもすぐにキュッと表情を戻し集中する。
しかし秀二は俊哉の顔を見るとハッと驚いていた。
（俊哉さんも…笑ってる）
何と俊哉も笑っていた。
彼もまた秀二との勝負に楽しさを覚えていた。
（凄いや…村神秀二君か。）
そう考えながらバットを構える俊哉。
そして浦原がサインを出す。
（でもツーストライクに抑えた。最後は…これだ！！）
サインを出す浦原に秀二はこの試合初めて頷くのに時間がかかった。
しかし秀二はゆっくりとコクリと頷くとセットポジションに構える。
そして…五球目が投じられた。
（ストレート？…あ！？）
ストレートと思い振りに行く俊哉。
しかし秀二の投げられたボールはストンと落ちた。
（よし俊哉さんはストレートと感じたはず…仕留めた！！）
投げられたのはフォーク。
秀二が今まで打たれたことのないボールである。
「え…」
「あ…」
ハモりながら思わず呟く秀二と浦原。
何とフォークの軌道上に俊哉の振ったバットが重なりボールがめり込み弾き返されていった。
カァァン…
快音を残し弾き返される打球。
そのボールは右中間を破っていく当たりとなりその瞬間グラウンド中がワッと歓声が上がった。
「おし！！」
同点のホームを踏む青木。
続いて二塁ランナーの隆彦も踏み逆転。
そして打った俊哉は二塁に到達し高々と腕を挙げた。
「やられた…」
陵膝に両手をつきながら表情をしかめる秀二。
得意球を完ぺきに打たれたのである。
ちなみに彼のフォークというのは夏の公式戦から一度もかすりすらされていない。
その記録というのを破ったのは秀二の憧れている俊哉であった。
そして続く打席には四番の明弘。
マウンド上の秀二は一度深呼吸をし集中させるが…
カキィィン…
「その球で勝負した時点で。俺の勝ちは決まっていた。」
高めへの球を振りぬく明弘。
弾き返された打球はライトへと舞い上がり…
ガシャァァン…
と大きな音を立てながらライトフェンスにぶつかる当たりとなるヒット。
この間に俊哉はホームインし打った明弘も二塁へ到達、しかし明弘は右手を見ながら首を傾げる。
（あれはホームランのはず…だが…力負けした！？）
しかし何はともあれこれで３点を入れ逆転をした聖陵であった。
次回へ続く。
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