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揚羽蝶は花に舞う






相葉も自分の着替えのため、用意された部屋の一室に入る。
すでに用意されていたスーツを手に取り、
来ていた服を手早く脱ぎ、襟元に白い糸で模様が入った黒のYシャツを着込む。
間に合わせだが、それぞれの生地は最高級で、肌触りも悪くない。


「しっかし、ホント、男の衣装は女の引き立てだな」


スラックスと同じ、縦じまの入ったグレーの上着を羽織り、
その姿を鏡で一瞥した相葉の口から苦笑交じりに言葉が漏れる。
ワックスで漆黒の髪を後ろに流せばいつもは髪で見え隠れする
切れ長の瞳や愁眉がはっきり見えるようになり、色香が露わになった。
部屋から出て店内へと戻れば、店のオーナーが待機しており、
相葉ににっこりと笑いかけ頭を軽く下げる。


「お疲れ様です。大変お似合いですわ」

「ありがとう」


お得意の店であり、オーナーともそれなりに親しくしているため、
賛辞にはそれ相応に笑顔で礼を返した相葉。


「瀬戸はまだ掛かるか…」

「えぇ。相葉様、お待ちになられる間、珈琲でも如何ですか?」

「…そうだな。頂こう」


アンティーク調のテーブルに促され腰を下ろす。
暫くして珈琲の香りが仄かに鼻腔を擽りだし、
目の前のテーブルに差し出された。
香りを味わい、一口飲む。
二口目を味わう前に、後ろから手が伸ばされてカップを奪われた。


「…これって、どういうことなんでしょうね」

「へぇ。間に合わせの割りには似合ってんじゃねぇか。
まぁ、俺の見立てに間違いがなかったってことだな」

「そういう話じゃないですよ。何で、俺がこんな格好を?!」






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