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「……、っん…」


薬の効力が切れたのか、足から伝わる固さと冷たさに
意識が浮上し始めた愁。



「…ここ、は」


まだぼやける視界。
薄暗く、埃っぽい印象を受ける場所、
だと言うことはわかるが、
何故自分がこんなところにいるのかがわからない。


「俺、どうして…、っい…」


立ち上がろうとして痛みが走った腕に、
今更ながらに違和感があることに気付いた。
…縛られている。


「思い出したッ!!」


思い出したら思い出したで、顔に怒気が浮かぶ。
あんな陳腐な作戦にまんまと嵌ってしまった自分もだが、
複数でしか行動できず、しかも計画犯は見てただけ。


「目、覚ましたみたいだね」

「…チッ、似非カマ野郎が」

「ッ、こいつ!!」


バシッ、と薄暗い空間に肌を叩く音が響いた。
身動きを封じられ、抵抗するまもなく叩かれた愁。


「こんな状態で、そんな事、よく言えるねッ!!
自分の今の状況、わかってるわけ??!!」

「…」

「皆、こいつが二度と皆様方に近づけないように
思い知らせてあげてよ」


そう言って一歩後ろに下がる少年に愁は
心の内で悪態をついた。


「悪く思うなよな。こっちも金がかかってんだ」

「そーそー。俺等の金のために大人しく蹴らんてよ」


ドガッ


楽しそうに笑い、ガタイのいい男は容赦なく
愁の腹部につま先をめり込ませる。


「グッ、ガハッ!!」


体をくの字に折り咳き込み、
それでも愁が泣き寝入りをするはずがなく…
細めた瞳で自分を囲む男達を見据えた。
圧倒的有利な立場にいるはずに男達は、
その瞳に一瞬気圧され、まるで自分達が
狩られるような気分を味わう。


「…テメェ等。憶えておけよ…、ぜってぇに許さねぇ…」

「ちょっと!!何、手を止めてるのさ?!」


愁のその言葉に足が止まってしまったが少年の声にハッとして、
また見えない背中や腹部を蹴り始めた。






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