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I'll always be with you.
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 沢宮さんが微笑んだ。




 なん……と、いうか、この人、大人だ。




 おれとは大違いだ。釣り合いとか、考えたことなかった。沢宮さんが不釣り合いなら、おれならもっとじゃん……。いや、まぁ、おれと柳井さんが付き合うなんてこと、まずないけど。




「今度は俺が質問するね。告白は? しないの?」




 沢宮さんが少し身を乗り出す。




「告白は……します。今度会ったら、直接言ってみようと思って……。でも、おれなんかじゃダメですよね。期待とか、全然」




 首を横に振る。期待は、してないよ。




「そうかなー。キスしてる時点で、少しは脈、あると思うけど」

「そ、それは……」




 それは、おれも少し思ったけど。でも、そんなの、いいように捉えてるだけだ。柳井さんは好きな人……いるだろうし。




「俺は、美鶴さんは慧くんのこと、ちょっと特別視してると思うんだよね。

 美鶴さんは結構前から、慧くんのこと知ってるんだよ? 知ってた? よく慧くんの舞台見に行ってたりしてたよ。あ、俺もだけど」




 え、そ、そうだったんだ。初めて知った。柳井さんも、おれのことを前から知ってて……特別視……うれしいな、なんか…………




「俺は慧くんのこと、応援してるよ」

「あ、ありがとうございます。沢宮さん」




 沢宮さん、いい人だ。おれが柳井さんを好きなこと、誰にも言ってなかったから、相談できる人が近くにできて、うれしい。言ってよかったのかも。




「あ、ねぇねぇ慧くん、俺のこと、沢宮さんじゃなくてさ、悠貴くんって呼んでよ」

「えっ」




 いや、いやいやいやいや、今日初めて会った事務所の先輩の名前を、そんなフレンドリーな感じで呼ぶなんて、できるわけないですよ。




「呼べないですよ。事務所の先輩を。歳だって沢宮さんの方が上ですし」


「あのさー慧くん、さっきちょっと言ったけど、俺だって前から慧くんのこと知ってて、前から仲良くなりたいなーって思ってたの。

 今日会えたのも、俺が美鶴さんに頼んだからなんだよ。

 それなのに、慧くんは美鶴さんのこと好きだし、美鶴さんは慧くんのこと独り占めしてるし……なんか俺だけ蚊帳の外だし…………。最初はカタチからでいいからさ、俺とももっと、仲良くしてよ」




 な、なんか、沢宮さん、かわいい……?拗ねてるって言うんじゃないの?こういうの。




 それより、沢宮さんが、おれと会いたいって思って、今日会うことになったのか。沢宮さんが、おれと仲良くしたくて…………。おれも、おれだって、沢宮さんともっと仲良くなりたい。色々話したい。




 でも、やっぱりいきなり名前呼びはな……。何か敬称はつけたい。




「あ、えっと、じゃあ、せんぱいって、呼ぶのは、ダメですか?」

「先輩?」




 “先輩”なら、相手敬ってるし、ちょっとフレンドリーな感じがするような気もするし、どうだろ…………




「そうやって呼んでる人、他でいる?」

「いないですよ?」

「ほんと? じゃあ、それでもいいよ。先輩、ね。俺、そうやって呼ばれるの生まれて初めてかも」




 せんぱいがうれしそうに笑った。よかった。喜んでくれてる。




「せんぱい、おれも、せんぱいと仲良くしたいです。もっと話したいです。これからもっと、仲良くしてください」




 微笑んで言う。柳井さんのこともっと聞きたいし、仕事の話とかもしたい。あ、同じ事務所だから、共演とか多くなるのかな……共演したい!




「……美鶴さんも言ってたけど、慧くんってかわいいね」

「えっ」




 かわいい?どこが。小さい頃は周りの人たちから何度も言われたことあるけど、もう高校も卒業するし、かわいい要素なんてどこにも……。かわいいとか、複雑な感じ……。かっこいいならうれしいんだけど。……って、美鶴さんも言ってた?え、なんか、柳井さんに言われるのは……うれしい、かも…………




「ところで慧くん、この後さ、時間ある?」

「え?」




 時間?仕事はもう終わってるし、家帰っても特にすることはないから、時間は、ある。




「ありますよ? どうしてですか?」

「DVD、見ない?」




 せんぱいが自分のバッグから、1枚のDVDを取り出して、そう言った。



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あきゅろす。
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