I'll always be with you.
5
「遅くなってごめん」
……もう遅れたのはどうでもいいよ。
「? どうした? 元気ねーの。あ、怒ってる?」
「……怒ってないよ……。ただ、ちょっと、おれバカだなーって思って」
「なんだそりゃ」
課題をしまい、バッグを持って立ち上がる。まさにぃと一緒にテレビ局を出て駐車場に向かう。あ、ちょっと雨弱くなってる。
まさにぃの車の助手席に乗る。車が動き出して、帰路につく。道は少しだけ混んでいた。
「飯食った?」
まさにぃが運転しながら聞いてくる。
「食べてない。おなかすいた。まさにぃは?」
「俺も食ってないよ。家帰って作るかー。
学校、課題出た?」
「うん。数学と英語教えて」
「あいよ。飯食ったらな」
そんな会話をしながら家のマンションに向かう。信号が赤に変わり、車が止まる。まさにぃに聞きたいことがあった。
「まさにぃさ、柳井美鶴さんと会ったことある? っていうか共演したことある?」
「……共演したことあるよ。直接絡みがあるような共演じゃねーけどな。話したことならけっこうある。……柳井がどうした?」
やっぱりそれでまさにぃのこと知ってたのか。だからおれのことも……?つーか知らなかったな。柳井さんとまさにぃがいつの間に共演してたなんて。
「さっきおれ、柳井さんに初めて会ったんだよ。柳井さん、おれのこと知ってたの。あと、イメージと全然違くてさ、びっくりした」
「……へぇー……」
「連絡先聞きたかったのに、聞きそびれちゃて……。もっと仕事のこととか話したかったのに。また会えるかなー」
まさにぃに自慢するようにさっきあったことを話す。だってうれしかったんだ。柳井さんに会えたことも、おれのこと知ってたことも。
「……慧さ……」
まさにぃが、何か言いたそうに声をもらした。
「柳井とはあまり関わらない方がいいぞ」
信号が青になり、また車が動きだす。
は?関わらない方がいい?どういうこと?
なんで?って顔をしてまさにぃを見る。
「うーんと……なんつーかー……あいつはやめておいた方がいい……。あーそうそう、好きになった女優さんとか、みんなあいつに取られるぞ」
なんだその理由。まぁたしかに取られそうだけど。柳井さんに勝てる気しないけど。……なんか含みのある言い方だなー…………
「なにそれ。まさにぃの実体験?」
じと目で見ながら言えば、
「ちっげーよ」
頭を軽くはたかれて言い返された。なんだ違うのか。
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