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氷帝学園
それはとある日の放課後/跡部景吾


それはとある日の放課後。



赤く染まった空
頬を冷たい風がすり抜ける

枯れ葉舞う季節

ただ、なんとなく、
今日は帰りたくない気分
ひとり屋上にたたずんでいた


何をするわけもなく
何を考えるわけもなく
ただ、ただ。
ひとり屋上から見える校舎を眺めていた


完全下校の時間はとっくにすぎている
もう生徒はいないはず
それなのに


パコーン


遠くでそんな音が聴こえた


少し気になり
音の正体を探す


それは案外簡単に見つけることができた



跡部景吾



氷帝の生徒会長であり
テニス部の部長でもある
いつも上から目線で俺様で…
正直関わりたくないタイプ


でも今の跡部景吾はそういう姿がどこにも見当たらない
ひとりテニスコートでひたすら壁打ちをしている姿は、普段からはとても想像ができない


想像できないのに
考えられないのに

つじつまが合うような
一本線が繋がったような
"跡部景吾"が分かった気がした


あんなに試合が強いのも
あんなに人望があるのも
全ては努力があるから…


でも、何でそこまで熱くなれるんだ?
何でそんなに頑張れるんだ?


私は跡部景吾から目が離せなかった




跡部景吾はいつから私に気づいていたのだろう

急に姿が見えなくなったと思ったら、屋上のドアが静かに開いた


「おい、とっくに完全下校は過ぎてるはずだぜ?アーン?」


さっきまで遠く眺めていたはずの跡部景吾がいつもの口調で近づいて来る


『・・・・』


自分が何を思っているのか、
何が言いたいのかが見当たらない
だんだん近くなる跡部景吾をぼんやりと眺めていた


「おい聞いてんのか!?」


いらつきが混じった言い方で
私の目の前までやってきた


『お前は何でそんなに強いんだ?』


「は?」


私から出てきた言葉は自分でも意外で。
跡部景吾も突然の言葉に目を見開いて驚いている
でもそれから…


「そんなの当たり前だろ。俺様はキングだからな!」


と、意気揚々と言った
でも最後に一言、こう付け加えた


「まぁあえて言うなら、夢があるからだろうな」


夢・・・?


『世界一の財閥になるとか?』

「んなわけねぇだろ。俺様の夢は全国大会で優勝することだ!」


そう話す跡部景吾の顔はすごく生き生きとして…
すごく眩しかった


『そうか、夢、か…
私にも夢、持てるのかな?』


独り言のように呟いた私の言葉を跡部景吾は見逃さなかった


「フッ当たり前だろ。俺様が保障してやるぜ。」


『…約束できる?私に夢が持てるって』

「勿論、約束だ。俺様が言う事に嘘などない」


ほんと、ナルシストだ
でも…そうだな、約束は案外簡単に果たされそうだ


 
 
それはとある日の放課後
 
 
(私の夢は)
(たった今できたようだ)


約束が果たされますように


 


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