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shooting star
Temporary house



「ジェシカ…」

ライルが連絡をしたのはラバーだった。

「…ダメよ…私にかかわっちゃダメ」

ラバーが近づくと、ジェシカは近寄らないように言った。

「あなたのせっかくの人生に…傷がつく」

すると、ラバーはクスクス笑った。

「何度ジェシカがオレを遠ざけても…」

泣き崩れたジェシカを抱きしめた。

「オレ…ほしいものは必ず手に入れるから」

「!」

「ジェシカの心も…奪ってみせる」

ジェシカも震える手で、ラバーを抱きしめた。

「……っ…」

ラバーは信じてもいい気がした。

「…この間はごめんなさい…あなたを傷つけた…」

「オレは打たれ強いから。ゴムだし」

ラバーは笑いながら言った。
しかし、抱きしめてくれたのは嬉しかったが、全身が震えているので離そうとした。

「離さないで…」

「!」

「平気…だから」

ジェシカがギュッと抱きしめてくれて、ラバーは幸せを感じた。

「あのー…」

「!!!!」

2人は、ライルのことを忘れていた。慌てて離れる。

「イチャつくのは後にしてよ」

ジェシカは真っ赤になってテレた。すると、ライルが嬉しそうに言った。

「ボクはまだ…1人じゃジェシカを守れないから…今はシドに頼るけど…いつかジェシカを守れる男になるからね!」

笑顔全快で言うライル。
すると、ジェシカはライルを思いっきり抱きしめた。

「…私はライルが世界で一番大好きよ」

「ボクもジェシカが大好き!」

「!」

そのセリフに黙ってないのがラバー。

「ジェシカ!オレは?」

ジェシカは少し考えてから答えた。

「……普通…?」

「!」

そう言われて落ち込むラバーは素直で少しかわいい。

「まぁ…いっか。それよりジェシカ、行くとこないんだろ?オレの家くる?」

「!」

「シドの家!?いいの?」

ライルははしゃぐが、ジェシカは…

「ダメよ。ライル。そこまでは甘えられないわ」

すぐに断った。
ライルがしゅんとしてしまい、ジェシカはちょっとかわいそうだと思ったが、そこまで甘えていい人ではない。

「じゃあ…別宅使う?」

ラバーはサラッと言ったが、ジェシカは驚く。
でも、ラバーはNBAでもかなりの高額年俸。ジェシカはいまいちわかってなかったが、今思い知った。

「ほとんど使ってないんだけど…最初に買った家だから手放せなくて…」

「でも…」

まだ迷うジェシカにラバーは言った。

「じゃあ、仕事。しばらく掃除してないから…してくれない?バイト代なしだけど、家賃ってことで」

「!」

ラバーはジェシカの扱いが少しわかってきたようだ。
好意はなかなか受け取らない。
でも、理由があれば…

「…いいの?」

素直になる。

「もちろん。オレも助かる」

「ジェシカ!行こうよ…ボクも手伝うから。お願い」

押し売りのようなプレゼントや施(ほどこ)しは嫌いなジェシカだが、頼みには弱い。

「…少しの間だけね…」

「!」

ライルはラバーの家に行けることになり、大はしゃぎ。

「シド…その話、受けてもいい?」

「あ…あぁ、もちろん」

ラバーはジェシカに初めて名前を呼ばれて、気絶しそうなほど嬉しかった。

「ありがとう…お礼は必ずするわ…」

「ボクも!やっぱり最高!」







「…バーからそんなに遠くないのね」

車で案内されたのはマンションだった。
8階建てのベーシックな造り。
ラバーの部屋は801。案内されてついていく。


「うわ〜エレベーターもあるし、広いマンションだね」

部屋についたライルははしゃぐ。

「少しホコリっぽいけどな」

「これがシドの家かぁ」

ライルは車イスで入れて安心していた。義足は長くは付けれない。

「…ジェシカも」

ラバーに手招きされ、ジェシカも中に入った。

「…わ…広い…」

リビングは20畳近くあり、天井は吹き抜けで高い。
中二階のようにリビングと天井の真ん中にあるフロアにはベットがあった。



「…キレイにしてある。使っていいから。2人なら寝れるだろうから」

「!」

ジェシカがベットを見ていると、ラバーが言った。
振り返ったジェシカは、恥ずかしそうに視線をそらして、リビングへ降りた。

「?」


ジェシカは自分の考えていたことを恥じた。
ラバーは…一体何人のコをこのベットで抱いたんだろう?と。

少し嫌だった。本当は少しじゃなかった。
最初の夜を思い出すような鳥肌が立つほど寒気のする嫌な感情もあるし、さっき抱きしめた手で誰かを抱いたと思うと胸が痛む。
ジェシカは、そんな資格は自分にないと、思いを打ち消そうとした。





「初めてのジェシカの手料理だ」

ジェシカは、少しでもお礼にと思い、夕飯を作った。
シチューのようななものだ。

「…食べたことがないくらい質素なご飯よ」

ジェシカが席に座ると、ライルが言った。

「ボクはジェシカのご飯が一番好きだよ」

「ありがとう…かわいいライル」

ラバーは2人が本当に仲が良くて、見ていて思わず笑顔になった。

「…おいしいよ。ジェシカ」






ライルがお風呂に入ると、ラバーと2人きりになる。

「じゃあ…今日は帰る」

玄関まで見送る。
ジェシカはたまらなくドキドキしたが、必死に隠した。

「本当にありがとう」

「お礼なんていらない。ジェシカが…少しでも笑っていられるなら…それが一番嬉しい」

「!」

「じゃあ、また…」








「ジェシカ〜」

大学で最近は、何人もよく知らない。人に話しかけられる。

「?」

振り返ると、よく知らない女の人。

「ねぇねぇ、ラバーって…やっぱスゴい?」

「!」

仲良くもないのに色々聞かれるのは嫌いだ。

「………。」

黙っていると、女はつまらなそうに引き返す。

「スターと付き合ってるからって調子に乗ってんじゃねーよ!遊ばれてんだよ!」

「!」

前なら何を言われても何とも思わなかったジェシカ。
しかし、今は少し傷つく。

そんなのわかっている…と何度も言い聞かせた。







マンションに帰り片付けをしていると、呼び鈴が鳴る。

「はーい」

ジェシカが玄関を開けると、そこにはラバーがいた。

「…入っていい?」

ジェシカはドアを全開にしてラバーに行った。

「あなたの家でしょ?」

ラバーは中に入って驚いた。

「すげぇ片付いてる」

「ライルも手伝ってくれたし…」

時計を見たジェシカは焦った。バイトの時間だ。

「ごめん、私行かなきゃ…ライル、ご飯昨日の残りでいい?」

「うん」

急ぐジェシカをラバーが引き止めた。

「…送ってくよ」

「え?」

「ライルも乗って…帰り、何か食べてこよう」

「いいの!?」

ライルが嬉しそうにはしゃぐので、ジェシカも迷った。

「ライルとは友達だし。食事くらいいいだろ?」

「………。」







「じゃあ、ちゃんとこの人の言うこと聞くのよ」

ラバーに送ってもらい、車を降りたジェシカが言うと、助手席のライルは笑顔全快で言った。

「わかってるよ!シドとご飯なんて楽しみだよ」

「いい子でね」

ライルにキスをすると、ラバーに言った。

「…ありがとう」

「仕事終わったらさっき言った番号に連絡して」

「うん」

「迎えに来るから」

ジェシカがうなすいて、車から離れた。







「シドはジェシカが好きなの?」

ラバーと食事に向かう車の中で、ライルが聞いた。
ライルがあまりに純粋な声で聞くので、ラバーは少しテレた。

「そうだな…」

「でも、軽い気持ちならやめて」

ライルは必死に訴えた。

「ジェシカが傷つくのは…見たくない。笑ってないジェシカなんて…見たくない」

ライルがうつむきながら言うと、ラバーは運転をしながらライルの頭をなでた。

「ライルはジェシカがホントに好きだな」

「うん…」

「じゃあ、ライルにだけホントのこと言うよ」

ライルは顔を上げて、ラバーを見た。

「オレは…」







バイトは今日は11時あがりで少し早い。

「店長、お疲れさまです」

「お疲れ。また明日もよろしく」

着替えたジェシカが店長にあいさつをして、帰ろうと裏口から出ると、

「ジェシカ〜」

待っていたのは、この間バーでウィルの話をした男。

「!」

ジェシカが後ずさりする。
男はまた酔っているようで、フラフラとジェシカに近づく。

「ウィルに…このバーの話したら興味ありそうだったよ」

「!」

ジェシカが怯えて、震えていると壁に背中がつき、逃げ道がなくなると、男は急接近して、

「ジェシカ…オレにも同じことしてよ」

壁に押さえつけられる。

「嫌…嫌…」

ジェシカが泣きながら震える声で言うと、男はさらに喜ぶ。

「ジェシカの嫌は信用できないなぁ。だって…ねぇ」

「!」

ジェシカは鳥肌が立った。
全力で抵抗したが、力では全然かなわない。

「や…!やだ…助けて…っ」

「かわいいジェシカ」

「嫌ぁっ!シ…」

「ジェシカッ!!」

ジェシカが泣き叫ぶと、ラバーが現れた。

「おっと。スターの登場か…」

男がジェシカから手を離すと、ジェシカは恐怖で足腰がたたない。

「貴様…っ!」

ラバーが男につかみかかり、殴ろうとしたのを見たジェシカは、

「ダメ!」

慌てて立ち上がり、ラバーの腕をつかむ。

「ダメよ…」

「ジェシカ!?こいつが何したと…」

ラバーが言うと、ジェシカは涙ながらに首を横に振る。

「…あなたの手は…人を殴ってはダメ。こんなことでケガでもしたらどうするの!?」

ジェシカは体が震えたままだった。

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