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shooting star
Sweetheart?



「ジェシカは…オレが嫌い?」

「え…?」

ラバーは、タバコに火をつけた。

「タバコ…吸うの?」

「あ…試合後以外吸わないようにしてたんだけど…」

無意識にタバコを吸っていたことに驚いていた。

「何それ」

試合ではあんなにしっかり指示を出せるのに、今はどこか抜けているラバーにジェシカは笑った。
ちょっと恥ずかしがるラバー。

「…正直、わからないわ。あの夜があって…嫌いなはずなのに、はっきりそう言えない」

「ホント?」

ラバーは少し嬉しそう。

「でも…私は、男そのものが怖いの。だから、これ以上あなたとの距離は縮まらない」

「!」

ジェシカのバイト先に到着。

「…もうこんな風には来ないで」

ジェシカは、シートベルトを外してから言った。

「チケットありがとう。ライルのあんな嬉しそうな顔…久しぶりに見れた」

「ジェシカ…」

ラバーが何か言おうとしたので、ジェシカは言われる前に言った。

「お金は!必ず払う。水曜と木曜以外はバーにいるから。暇なとき取りに来て」

ジェシカは車を降りてドアを閉める。

「本当は持って行くべきなんだけど…行くのは怖い。ごめん。送ってくれてありがとう」

ジェシカはそのまま振り返らずに歩いた。









「ジェシカ、見たよ〜」

バーが開店すると、常連客のオジサンが。
試合のない日に来るのはめずらしい。

「何を?」

「この間の試合、見に来てただろう?」

「うん。行ったわ」

ジェシカは頼まれていたビールを出す。

「ラバーといつの間にそんな関係に?」

「え…?」

「隠すなよ。誰にもなびかないジェシカもラバーは別だったか」

「!」

オジサンがビールを飲む。

「…そんなんじゃないわ。私じゃなくて弟を招待してくれたのよ」

「そうかな…少なくともラバーは弟を誘えばジェシカが来ると思ってたと思うが」

「………。」

「ウチの娘もジェシカみたいな美人だったら、ラバーに勧めるのになぁ」

オジサンがおもいっきり笑うので、ジェシカも笑った。

「もう…この話はおしまいよ。じゃなきゃビール没収」

「そんな〜ジェシカは手厳しいな」

オジサンは親ほど歳が離れているが、話をしていて楽しい。








「ただいま〜」

「…ジェシカ…ッ」

バイトも終わり同じような家が並ぶ通りの自分の家に帰るジェシカ。
すると、ライルが義足を引きずるように、泣きながら走ってくる。

「どうしたの?」

「…ママが…」

「!」

ライルがジェシカに抱きつきながら言う。
ジェシカはライルを抱きしめてから、ライルが逃げてきたリビングへ。

「あら、お帰り〜」

「!」

ジェシカとライルの母は、見知らぬ男を連れてきていた。

「コレ、新しい彼氏〜」

「初めまして…さすがミラの娘、美人だな」

「まぁ、マイクったら。妬(や)いちゃうんだから」

若い感じのする男。ジェシカは視線を合わせなかった。
ジェシカの母は、普段はまったく家に帰らないで、娼婦まがいのことをしている。

「…ん…っ」

目の前でキスをして抱き合う2人に嫌気がさす。

「…ジェシカ、ライルと出ていってくれな〜い?」

「!」

またいつもと同じパターンになる。

「おばさんのとこでも…行きなさ…っあ…」

ジェシカ達は男ができるたびに追い出された。
本当の父は、ジェシカ6歳のときに他界。母がライルを身ごもっているときだった。

「いつもいつも…勝手言わないで!普段は寄り付かないくせに」

ジェシカが怒鳴ると、母はクスクス笑った。

「ここは私の家よ。だったら出てけば〜?できないくせに」

「!」

ジェシカは頭にきて部屋を飛び出し、ライルと自分の荷物をまとめる。

「……っ…」

悔しくて涙が出た。
何も言い返せない。あんな母でも、今いなくなったら生活すらできない。
大学の資金は、母が受け取った父の生命保険から出ている。

ジェシカはなんとしても大学を卒業して、いい会社に就職しなきゃという気持ちが強くなった。








「ジェシカどこ行くの?」

ライルが不安そうに聞く。

「バイト先」

「バー?」

ジェシカは口数が少ないまま車をバーへと走らせた。




「店長!」

ちょうど戸締まりを済ませた店長と駐車場で会う。
ライルを車に残してジェシカだけ降りた。

「ジェシカ?どうかしたのかい?」

大きな荷物と、ライルを連れたジェシカにちょっと戸惑う店長。

「すみません…1週間でいいのでバーに寝泊まりさせてもらえませんか?」

「!」

驚く店長に、必死にお願いした。

「寝泊まりだけでいいんです。掃除もします」

ジェシカの訴えに店長はため息。

「事情はわからないが…わかった。どうぞ」

店長が鍵を渡してくれた。

「何かあったなら家来るかい?」

「いえ!そこまでは…バーで十分です!ありがとうございます!」

「そう?じゃあ、冷暖房は自由に使っていいから」

「はい。ありがとうございます!」

ジェシカは何度もお礼を言ってライルを連れてくる。




「ココがジェシカの働いているところ?」

「そうよ」

消えたバーの電気をつけると、ライルが少しはしゃぐ。

「わぁ…なんかすごい!」

カウンターに並ぶお酒を見てライルがはしゃぐ。

「大人になったらライルにもカクテル作ってあげる。私のカクテル評判いいのよ?」

「ジェシカのだもん。当然だよ」

ジェシカは、裏に置いてある毛布を出してくる。
ライルの無邪気さが、滅入ってしまいそうな今の唯一の救いだった。

「シャワー室だけならあるから、ライル足と頭洗ってあげる」

「うん」







ジェシカがシャワー室を使っている間、ライルは色々考えていた。
確かに、このバーには住めなくないが、安全性を考えると心配だった。

「………。」

ライルは自分の手を眺めて、ジェシカを守る力がないことを悔やむ。

「ジェシカはいつも守ってくれるのに…」

ライルが落ち込んでいると、ジェシカがシャワーから戻ってきたので、溜まっていた涙をぬぐって笑った。

「ジェシカ、真っ暗は怖いからキャンドル1個だけつけていい?」

「1個だけね」

ライルはソファーに毛布でくるまりながら座り、目の前のテーブルにあるグラスに入ったキャンドルに火をつけた。

「ライルはまだ真っ暗じゃ寝れないの?」

ジェシカが隣に座った。

「うるさいな〜子どもだと思ってるんだろ?」

ライルがムッとすると、ジェシカはそれがかわいくてたっまらなかった。




「ライル…」

「ん?」

ソファーに横になるライルの髪をなでながらジェシカは、ソファーの前に座っていた。

「ごめんね…こんな家族で…」

ジェシカが言うと、寝そうだったライルが笑いながら言った。

「どうして?ボクはジェシカに会えて幸せだよ」

「!」

「おやすみ…」

そのまま眠るライルに、ジェシカは一粒の涙がこぼれた。

「ありがとう…」

ライルのおでこにキスをして、ジェシカも向かいのソファーで眠る。
ジェシカもライルがいなきゃ、今の状態に耐えれなかった。
それなのに、3年前のあの日…なんでライルを置き去りにしてあんな男を優先したのか…とジェシカはずっと悔いていた。












「いってらしゃい」

バス停まで送るより学校の方が近いので、ジェシカは学校までライルを車で送る。
車イスに乗ったライルを車から降りて見送る。
手を振ると、ライルは少し恥ずかしそうだ。

「ジェシカ!声大きいよ…もう…」

「…ごめん。帰りはまた公園に行くわ」

ジェシカがひそひそ話す。ライルはテレながらもうなずく。
ライルが車イスで進もうとすると、

「ライル、おっはよ〜!バスにいなかったから休みかと思った」

すぐにライルを何人かの友達が囲む。

「今日はジェシカが送ってくれたんだ」

ライルが振り返ると、ジェシカが手を振った。
ライルが手を振ろうとしたが、それより先にライルの友達がジェシカに手を振る。

「ライルのお姉ちゃん美人だよな〜」

「ホント。映画に出ててもおかしくない」

「かわいいし。彼氏うらやまし〜」

彼氏の話が出ると、ライルは車イスをこいで校舎へと急いだ。

「ジェシカは…ジェシカをちゃんと守ってくれる男じゃなきゃダメだ。認めない」

ライルがムキになって言うと、みんながひかやす。

「ライルのシスコ〜ン!」

「!」

「まぁ、あんなキレーなお姉ちゃんなら仕方ないけどな」

ライルはシスコン扱いされて更にムッとしていた。


ジェシカはライルが校舎に入るまで見ていた。
友達と楽しそうにしていてホッとして、自分も大学に向かった。






「ジェシカ!!」

駐車場に車を止めて歩こうとすると、ナディアが突進してきて車とナディアに挟まれて、ジェシカは身動きがとれなくなった。

「な…何?」

「ラバーよ!ラバー!どういう関係よ!」

ナディアが叫ぶと、昨日の一部始終を見ていた人達が聞き耳をたてる。

「あぁ…別に…」

ナディアをよけて、ジェシカが歩く。

「…知り合い?バーに飲みに来たの」

「ウソ!ジェシカ、男の誘いみんな断ってたくせに!」

スタスタ歩くジェシカを追いかけるナディア。

「みんなラバーとできてるってウワサしてるよ」

「!」

ジェシカの足が止まる。



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あきゅろす。
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