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shooting star
Brother



ここはアメリカ。とある州。

「High booster(ハイブースター)の試合、最高だったな!」

「あぁ!特にPG(ポイントガード)のラバーは最高だったな!」

「まさにrubber(ゴム)!」

バーで飲み直し、軽く酔っ払ったオジサン達の会話は、ブースターの本拠地であるこの街で試合のあった日は絶えることはない。

「ジェシカも見たかい?」

このバーで働く大学生のジェシカに話題をふるオジサン達。

「…私、バスケットは興味ないから。でも、弟が好きだからなんとなくは知ってるわ」

グラスをふきながらカウンター越しにオジサン達と話すジェシカ。
こげ茶色のサラサラの髪にグリーンの目をしたジェシカは、街で有名になるほどの美人。

「今度、一緒に行こう。ジェシカ」

若い男に誘われたジェシカ。頼まれたカクテルを作り、出しながらジェシカは笑顔で答えた。

「弟も連れて行ってくれるなら」

「そんな〜ジェシカ〜」

カウンターにいたみんなで笑った。


「しかし、ラバーも知らないのかい?年頃も同じだろう?」

「…隣町にバスケットのうまい男がいるってのは聞いてたけど…。それくらいしか知らないわ」

ジェシカは今年で21歳。
周りはバスケットの話ばかりのこの街にとってラバーはスター中のスターだった。








「HEY!パス!」

「…ライル、うますぎだ!バカ!」

ある日の夕方、金網に囲まれた公園のコートで、車イスがぶつかり合う。
車イスでのバスケット。
夢中になる男の子達は10〜15歳まで様々。

「ライル〜」

11歳のライルを迎えに来たのはジェシカだった。

「ジェシカ!見た?」

ライルは嬉しそうにジェシカの元に車イスで急ぐ。
ライルはジェシカの弟。
バスケットをして遊んでいたみんなにジェシカが笑いかけると、みんなテレた。

「見たよ。ライルがもう一番ね」

「ジェシカはわかってないな〜。バスケはチームプレーなの」

ジェシカは説教されながらも、ライルの車イスを押す。

「…はいはい。病院の時間よ」

「え〜!もっと遊びたいよ」

「明日があるじゃない」

「………。」

ちょっとスネるライル。

「ライル!明日はマジ勝負だからな!」

同じく車イスのスコールが言うと、ライルは軽く手を上げて答えた。



「…でさ!」

ジェシカの車で病院の定期検診に向かう間もライルはバスケットの話ばかり。

「ラバーがすごいんだ!」

まるで自分のことのように話すイキイキしたライルが、ジェシカは好きだった。

「あんなの普通できないよ〜。それが隣町出身なんて…」

「………。」

「いいなぁ〜…試合も行きたいし、いつか…会ってみたい」

窓の外をながめるライル。
ジェシカは複雑な思いを抱えていた。
ライルが車イスな原因はずっと自分にあるとジェシカは思っていた。

「…そんなに行きたいの?」

「当たり前だろ!この街で興味ないのなんてジェシカくらいだよ!」







「いらっしゃい。何にする?」

いつも通りの夜だった。
常連客にカクテルを作るジェシカ。
すると、常連のオジサンがドアをバンッと開けて、カウンターに来る。
カランカランとドアの上のベルが鳴る。

「どうしたの?」

「た…大変だ…」

オジサンのカウンターについた手が震えている。

「…ブースター負けた?」

「いや、勝ったんだが…」

オジサンが入口を指差す。

「ラ…ラララ…」

「?」

「ラバーが来た!」

「!!!!」

この言葉にはバーにいた全員が驚く。

「しかも…カーターとスミスも一緒だ!今…そこで女の子と…」

そう言っているとドアが開きカランカランと音がバーに響く。

「い…いらっしゃい」

入ってきたのはラバー達3人と、女の子3人。
一番ドアの近くにいた店長は、驚きすぎて後ずさり。

「え〜ここ?」

「いつもの店は?」

窓際の一番いい席を取る。
女の子達はこのバーが不満のようだ。
みんながラバー達を見つめていた。

「…仕方ないだろ。改装中なんだから…」

「でもぉ…」

ブロンドで巻き髪の声のかわいい女の子が不満そうに座る隣にラバーが座った。

「オレがいれはいいだろ?」

肩を抱き止せながらラバーが言うと女の子は嬉しそう。みんなのざわめきから、ブースターのチアのコらしく、一番美人の女の子らしい。

「うん」

「ご注文は?」

店長が急ぎ注文をとる。ラバーは結構態度が悪い。
テーブルに足を置く。

「オレ様と言えば決まってんだろ?全員にビール。灰皿も」

店長がカウンターに戻ってくる。
お客はみんなそわそわしている。

「ラ…ラバー」

男性客の1人が、ラバーに話しかけた。
常連客のオジサン。

「サインもらえないか?」

ラバーは、黙ってペンを取りサインをした。

「さすが一番の人気者は違〜う」

ブロンドの女の子が猫のようにすりよる。

「あ…ありがとう!応援してるよ」

オジサンは嬉しそう。
すると、みんながサインをねだりだす。


「ジェシカ、ビール持っていって…」

店長が言った。
気の弱い店長は、注文だけで疲れたようだ。




「ルイ、よけて」

「あ…ごめん。ジェシカ」

ビールを両手いっぱいに抱えたジェシカが、サイン待ちの人達をかきわけて、ラバー達のテーブルにビールを置いた。

「ビールです」

ジェシカを見たカーターが口笛を吹いた。

「いい女じゃん」

口笛に気づいたラバーと目が合ったがすぐにそらした。

「隣の女の子の方が素敵だと思います」

ジェシカはカーターを営業スマイルでかわして、カウンターに戻って常連客のサインをもらったオジサンに話しかけた。

「よかったわね。ずっと応援してたもの」

「あぁ、幸せだ!ジェシカ、レッドアイを!」

「…トマト苦手じゃなかった?」

「今ならなんでもできそうだ!」

「ふふっ…わかったわ」


シェイカーを振り、カクテルを出した。

「…どうぞ」

「よし!」

一気飲みしたオジサン。

「大丈夫?」

「…あぁ。大丈夫だよ」

ちょっと戻しそうなオジサン。
それがおもしろくて笑った。


「オレにもカクテルを」

「!」

カウンターにやってきたのはラバー。

「何を…?」

ジェシカは明らかに表情が曇る。

「そーだな。オリジナルとか?ある?」

「はい…」

ジェシカは一度もルラバーを見なかった。
なんとなく嫌いだった。軽そうな気がする。

「…ジェシカって…かわいい名前だな」

「…ありがとう」

ジェシカはカクテルをラバーの前へ。

「…twilight(夕暮れ)です」

オレンジ色をしたトワイライト。ラバーの前に置くと、手をつかまれたジェシカ。

「!」

「何時あがり?オレと…デートしよう」

ラバーにジェシカが誘われた。
これはみんなが聞いていて、ジェシカの答えを待った。

「…して…っ!」

「え?」

ジェシカはラバーをキッとにらみつけ、手を振り払う。

「放して!触らないで!」

ジェシカは怒ったまま、裏の倉庫に姿を消す。

「シド(ラバーの名前)がフラれた!」

チームメイトのカーターが笑う。
氷ついたように動かないラバー。握ったジェシカの手は震えていた。

「残念だったな」

オジサンがラバーに話しかける。

「ジェシカは、バスケットにまったく興味がなくてね」

「!」

ラバーが驚いていた。

「ジェシカ…」





裏で在庫を整理して、1時間くらい経ってから店に戻る。

「もぉー…シドってば」

ラバーはつぶれそうなくらい酔っていた。今にも寝そう。

「先行くぞ。じゃあな」

カーターとスミスが店を出たので、店長がお見送り。
カーターがラバーにべったりの女の子も連れて行く。
カーターとラバーがアイコンタクト。何かを企んでいた。

「…はー…いい気分」

ラバーがカウンターに座りながら言う。
ジェシカは黙って片付けをした。

客がもうラバー以外にいないのに気づいたジェシカは、ラバーと距離をとる。

「…ジェシカは…本当にオレを好きじゃない?」

「はい…」

さげたグラスを洗うと、ラバーの笑い声が聞こえた。

「ははっ、すげー…初めて会った」

「…ファンじゃない人?すごい自信ね」

ジェシカが皮肉を込めて言うと、ラバーはうつむきながら笑った。

「みんな…バスケットマンのラバーが好きなんだ…」

「………。」

すると、店長が戻ってきた。

「ジェシカ!悪いけど、戸締まり頼んでいいかい?」

「かまいませんけど…どうかしました?」

「子どもが熱を出したらしくてね…」

バタバタと急ぐ店長。
ジェシカに鍵を投げる。

「わかりました…慌てても急いじゃダメですよ」

「ありがとう。じゃあ、また明日」

店長がラバーに会釈。

「また来てください」

ラバーはヒラヒラ手を振る。


「…さ、閉店時間ですので。タクシー呼びますか?」

「もう?…いい、歩いて帰る」

最後のビールを飲み干したラバーが立ち上がろうとすると、

「おわ!?」

「!」

ラバーが立てずに転んだ。

「ちょ…大丈夫!?」

起こしにいくと、ヘラヘラ笑うラバー。

「大丈夫。歩いて帰るから」

「タクシーつかまえるわ」

ジェシカが表通りに出ようとすると、ラバーが腕をつかむ。

「いい!タクシー苦手なんだ…酔うから」

「でも、そんな状態で隣町まで…いくら近いからって…」

今にも寝そうなラバー。完全な酔いつぶれ。
一応スター選手みたいだし…とジェシカは迷った。



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あきゅろす。
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