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shooting star
Part




「…ルーナ?」

ジェシカは、記事が出てから1ヶ月後くらいに、ルーナに電話をした。
もうすぐNBA開幕。

『…ジェシカ!?どうしたの?』

「ただ、ルーナが大丈夫かと思って…」

『!』

ジェシカは家に帰ってから部屋で電話をしていた。

『…ジェシカは優しいのね。普通、怒ってもいいのよ?』

「…だって、ルーナは約束とか規則とか破らないでしょ?」

『!』

「だから…心配で。仕事、大丈夫?」

ルーナの声が少し震えた。

『…クビになっちゃった』

「!」

『本当じゃなくても、話題になることさえ問題だって』

「そんな…」

『でも話題性があれば、再就職もなんとかなるかも』

ルーナはすぐにいつものように明るい声に。

『だから、私は大丈夫よ。それよりジェシカの方は?』

「…うん、まぁ…ね」

『過去まで…探られて…私、もっと気を引くように頑張るわ』

「!」

『もうブースターに未練はないわ。ラバーのことは次のステップにさせてもらう』

「…強いね。ルーナは」

ジェシカがクスッと笑った。
すると、ルーナは少し申し訳なさそうに言った。

『…ラバーとは何もないからね』

「…うん。なんとなく予想できてた」

『そっか!よかった…誤解されたままだったらどーしよーかと思ってたの』






それから、しばらく話してルーナとはほとぼりが冷めたら会う約束をした。

「ジェシカ〜」

電話が終わると、母親が部屋に入ってきた。

「何?」

「ねぇ、本当はあなたが恋人なんでしょ?」

「!」

最近、母親との会話はこんなのばっかり。

「ねぇ、母さん自慢したいのよ。本当のこと教えて」

「…違うってば!私なんか相手にされないわ」

「お願いよ、ジェシカ。取材に答えたらお金がもらえるのよ」

「!」

「…母さんまで…もうやめてよ…」

ジェシカは泣きそうになった。

「私、ライルのことやあのことが表沙汰になったら、生きていけない…」





しばらくして、ライルが部屋にきた。

「ジェシカ…大丈夫?」

疲れているジェシカを心配していた。

「平気よ…」

ジェシカは笑った。

「ライルにまで迷惑かけてごめんね」

「そんなの…全然いいよ」

「ありがとう」









『ジェシカ…メッセージ聞いたら連絡して。色々迷惑かけてごめん』

ジェシカは夜になり、真っ暗な部屋でラバーの残したメッセージを聞いていた。

「……っ…」

声を聞くと、好きな気持ちが涙と一緒にあふれてきた。







「ねぇ、ジェシカ。話聞かせてよ〜」

大学や家まで取材に押し掛ける人達が出てきた。

「…関係ないです。話すこともないです」

ジェシカは、付け回され疲れきっていたが、ラバーには助けを求めなかった。
今でも迷惑をかけているのに、これ以上重荷になりたくない。










「ジェシカ!」

朝、大学に行くとナディアが走ってきた。
ナディアはラバーのことは教えてくれるけど、何も聞かない。
それが唯一安らいだ。

「どうしたの?」

「昨日のテレビ見た?」

「テレビ?」

「ラバーへの独占インタビュー」

「!」

ジェシカが驚くと、ナディアは携帯でそのインタビューのムービーを見せてくれた。

『…では、今シーズンも活躍が期待されますが…最近、別の話題もありますね?』

みんなが待ってました!の反応。

『…そうですね。関係者を始め、チームにまで迷惑をかける事態になってしまって…』

『同じチームのチアのルーナが辞めましたが?』

『彼女には迷惑をかけました。まさかこんなに騒がれるとは…』

『ということは…彼女が本命で?』

ラバーは笑顔で答えた。

『…違います』

『それじゃあ、一般人の?』

ラバーの顔から笑顔が消えた。真面目に答えた。

『…彼女にも迷惑をかけました。ですが、オレやルーナと違って彼女はただの一般人です』

ラバーは、心から訴えた。

『どうか…追いかけ回して、彼女の過去まで掘り下げるようなことは…やめてください。代わりにオレがすべて答えます』

ジェシカは、頭を下げるラバーに涙があふれた。
嬉しくて、今すぐにでも会いたい。
でも、これ以上かかわってラバーのスターとしての経歴を傷つけたくなかった。









「…ジェシカ・カーティスさん?」

大学帰りに、車に乗ろうとすると、スーツ姿の30代後半の男に呼び止められた。
振り返ると、名刺を差し出された。

「…ブースターのオーナーが話をしたいと」

「!」









ジェシカは男に案内されるがまま車に乗った。
すると、車は人気(ひとけ)のない港へ。
海を眺めていた40代くらいの男が振り返る。

「はじめまして。オーナーのエドワードです」

差し出された手を握った。

「はじめまして。ジェシカです」

「本当は会社にお招きしたかったが…今は時期が悪くてね。申し訳ない」

「…いえ。ご迷惑をかけているのはこちらです」

すると、エドワードはジェシカを見て笑った。

「なるほど。美しく聡明(そうめい)なお嬢さんだ」

「………。」

「それなら私が言いたいこともわかってもらえるかな?」

「なんとなくなら…」

オーナーはまた笑った。

「彼…ラバーはうちで一番稼ぐ商品だ」

「!」

「ルックスもプレーでもファンを魅了してる。今の時期を逃すわけにはいかないんだ」

「………。」

「君は若くて美しい。いくらでも出会いがあるだろう?わかってほしい…」

すると、今までほとんど黙ったままだったジェシカが言った。

「…わかりました」

「本当かね?」

「私は…彼の邪魔にはなりたくないと思っていたので、今も連絡はとってません」

「…そうだったのか。物分かりのいいお嬢さんで助かる」

すると、オーナーが小切手を出した。

「彼の暴露とか後からされても困るのでね…」

額は10万ドル。
ジェシカは額に驚いたが、受け取らなかった。

「受け取れません。私はこんなものがなくても彼のことは何も話しません」

「!」

「全部、大切な思い出にします」

ジェシカは笑って、オーナーに背を向けた。

「あ…」

ジェシカは再びオーナーを見た。

「それと、私は彼のことを商品として見たことありません」

「!」

「ありがとう…と伝えておいてください」

オーナーは去りゆくジェシカを見てボソッと言った。

「…なるほど。ただのミーハーではなさそうだ…」







それから2週間ほどは何度かラバーから連絡があったが出なかった。

何も語らないジェシカに大学では「ラバーと別れた」と噂が流れた。

すると、ラバーのインタビュー後、わずかに残っていた取材らしき人物もいなくなった。

NBAが開幕すると、ラバーからの連絡も来なくなった。








「ジェシカ、やっと開幕だ」

オジサン達がバーに飲みにきた。

「そうね。バスケットが始まらないと来てくれないから寂しかったわ」

「ジェシカにそう言われるとテレるな〜」

ジェシカに日常が戻っていた。






「ライル〜」

ジェシカがバスケットコートで遊ぶライルを迎えに行く。

「待ってジェシカ!あと3分!」

「え〜?もう、仕方ないなぁ」

すると、ライルはスコールと最後の勝負。

「負けたらワイズのカードとマイケルのカード総取りな!」

「望むところだ!」

どうやらバスケット選手のカードを賭けている様子。

「ケガしない程度にね〜」

そんな日常を笑って見守るジェシカは、幸せを感じた。

だけど、ふとラバーのことを思い出すと、胸にぽっかり穴が空いたような気分になり、まだ苦しい。

これでいいんだ…と思えば思うほどラバーとの思い出がよみがえった。









「…ったく、どうなってるんだ!?」

最近バーに来るオジサン達は荒れ気味。
ブースターが連敗中。

「特にラバーの…!」

何か言おうとしたが、ジェシカに気づいてやめた。
しかし、ジェシカは笑ってビールを持っていく。

「連敗の原因はラバーなの?」

「え…あ、いや…」

「私に気をつかわないで。オジサン達にそんな態度とられたら寂しいわ」

オジサン達も優しく笑った。

「そうだな…」









しかし、それからラバーの話はいい話を聞かない。
新聞にもヒドい書かれようだ。プレーが思うようにできていないらしい。
マークされているから当然だが、そのせいで連敗だと言われていた。

「………。」

ジェシカは記事を見て、ラバーがいる世界の厳しさを知る。
前はスターでも、今は罪人のような書かれ方。

「…頑張って…」


ジェシカがスーパーで買い物を済ませて、車に乗り込もうとすると、

「…ジェシカ?」

「!」

聞き覚えのある声。
車の窓に映る姿にジェシカは震えた。

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あきゅろす。
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